学術情報
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2、従来株及び変異株)スパイクタンパク質に所定濃度の二酸化塩素溶液を加え反応させ、ACE2受容体タンパク質を加え結合させました。次にホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(Horseradish peroxidase; HRP)標識Anti-ACE2抗体を加え、HRPの化学発光基質を添加し化学発光量をルミノメーターで測定することにより、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)スパイクタンパク質とACE2受容体タンパク質の結合活性に対する二酸化塩素の阻害効果を検証しました。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2、従来株及び変異株)のスパイクタンパク質へのヒトACE2受容体タンパク質の結合活性(化学発光強度)は、二酸化塩素の濃度の増加とともに減少しました。
50%の結合阻害するのに必要な二酸化塩素溶液の濃度(IC50)は、従来株で6.5μmol/L(0.4 ppm)、アルファ株(英国株)で7.6μmol/L(0.5 ppm)、ベータ株(南アフリカ株)で5.8μmol/L(0.4 ppm)でした。
二酸化塩素が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)スパイクタンパク質に作用し、ACE2受容体との結合を阻害することがわかりました。
新型コロナウイルススパイクタンパク質とヒト ACE2 受容体の結合を
50%阻害するために必要な二酸化塩素溶液の濃度(IC50)
新型コロナウイルス | IC50 |
---|---|
従来株(武漢株) | 6.5μmol/L (0.4ppm) |
アルファ株(英国株) | 7.6μmol/L (0.5ppm) |
ベータ株(南アフリカ株) | 5.8μmol/L (0.4ppm) |
Ogata N. and Miura T. Ann Pharmacol Pharm 5(5): 1195 (2020).
Ogata N. and Miura T. Ann Pharmacol Pharm 6(1): 1199 (2021).
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2, JPN/TY-WK-521/2020 strain)に所定濃度の二酸化塩素ガス溶存液又は次亜塩素酸ナトリウムを所定時間作用後VeroE6/TMPRSS2細胞に感染させ、そのウイルス感染価(TCID50/mL)を測定しました。
コントロールとして蒸留水を同様の方法で測定し、比較しました。
[二酸化塩素ガス溶存液は大幸薬品製を使用]
8 ppmの二酸化塩素ガス溶存液は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のウイルス感染価を10秒で99.96%不活化し、80 ppmの二酸化塩素ガス溶存液は10秒で検出限界以下まで不活化しました(99.99%以上不活化)。
Hatanaka N., et al. J Hosp Infect 118, 20-26 (2021). より改変
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の従来株(JPN/TY-WK-521/2020)、アルファ株(B.1.1.7系統の変異株, JPN/ QHN001/2020)、ガンマ株(P.1系統の変異株, JPN/ TY7-501/2021)に、二酸化塩素ガス溶存液の所定濃度を所定時間作用後VeroE6/TMPRSS2細胞に感染させ、そのウイルス感染価をプラーク法で測定しました。
コントロールとして蒸留水を同様の方法で測定し、比較しました。
[二酸化塩素ガス溶存液は二酸化塩素濃度154 ppm、大幸薬品製を使用]
実験に用いた新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)
※表は横スクロールできます。
株名 | 正式名称 | E484K変異 (従来株に比べワクチン効果を弱める可能性) |
N501Y変異 (従来株に比べ感染性高い可能性) |
|
---|---|---|---|---|
従来株 | WK-521 | hCoV-19/Japan/ TY-WK-521/2020 |
× | × |
アルファ株 (B.1.1.7 系統の変異株) |
QHN001 | hCoV-19/Japan/ QHN001/2020 |
× | ○ |
ガンマ株 (P.1 系統の変異株) |
TY7-501 | hCoV-19/Japan/ TY7-501/2021 |
○ | ○ |
二酸化塩素ガス溶存液(二酸化塩素濃度154 ppm)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の従来株(JPN / TY-WK-521/2020)、アルファ株(B.1.1.7系統の変異株, JPN / QHN001/2020)、ガンマ株(P.1系統の変異株, JPN / TY7-501/2021)のウイルス感染価を10秒間で99.99%以上不活化しました。
二酸化塩素による新型コロナウイルス変異株の不活化効果
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北里大学、大幸薬品共同研究