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【学術情報 木クレオソートの話】木クレオソートとは

木クレオソートと石炭クレオソートの違い

 木クレオソート(Wood Creosote)とは、日本薬局方に1886年の初版から現在まで継続して収載されている医薬品です(初版には「結麗阿曹篤」として収載)。また、一般用医薬品の胃腸薬承認基準に制定され、胃腸薬としての有効性と安全性が認められています。木クレオソートは止瀉薬の項目の殺菌剤として分類されているため、食あたりや水あたりといった感染性の下痢に有効であると考えられています。さらに、当社の様々な研究により、腸管内での水分分泌調節と、大腸の運動亢進の正常化作用をもつことが明らかになりました。

 木クレオソートはブナ、マツなどを炭化する際に得られる木タールを蒸留して精製される微黄色透明の液体です。分子量は、100から160までの22化合物からなり、そのうち19成分がフェノール系の化合物からなります。
 グアヤコール(guaiacol)、クレオソール(creosol)、フェノール(phenol)p-クレゾール(p-cresol)、4-エチルグアヤコール(4-ethylguaiacol)、o-クレゾール(o-cresol)の主要6成分で全体の約80%をしめます。

木クレオソート主要6成分


 一般に「クレオソ-ト」と呼ばれているものには二種類あり、その一つは医薬用の日本薬局方 木クレオソ-ト(植物由来)、他の一つは日本工業規格(JIS)クレオソ-ト油(石炭クレオソート、鉱物由来)です。その呼称が類似しているため、両者があたかも同じものであるかのように誤解された経緯がありますが、両者はその原料、成分及び用途が全く異なる物質です。
 THE MERCK INDEX 13版では、日本薬局方 木クレオソ-トをWood Creosote(CAS Reg. No.8021-39-4)、日本工業規格(JIS) クレオソ-ト油をCoal Tar Creosote(CAS Reg. No.8001-58-9)と表記し、両者を明確に区別して記載されています。
 日本薬局方では「クレオソート」と名称されていましたが、日本薬局方第15改正(第一追補)(JP. XV)から「木クレオソート」に名称変更されることになり、今後、日本工業規格(JIS) クレオソ-ト油とは明確に区別されることになります。

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米国発がん性物質報告書の誤った記載

 米国において、1985年国際癌研究機構(International Agency for Research on Cancer, IARC)で、石炭クレオソート(日本工業規格(JIS) クレオソート油)が「人に対しておそらく発がん性がある化合物群」Group 2Aに分類されました。また、2000年、米国毒物プログラム(National Toxicology Program, NTP)の第9版発がん性物質報告書(9th Report on Carcinogens 2000)や米国環境保護庁※※(Environmental Protection Agency, EPA)の使用制限物質報告書(Restricted Use Products Report)に、石炭クレオソート(日本工業規格(JIS) クレオソート油)と名称がよく似た木クレオソートが同一物質として収載されました。
 大幸薬品はTHE MERCK INDEX により木クレオソートとクレオソート油が全く異なる物質であることを示し、さらに2001年米国でGLP(Good Laboratory Practice, GLP)基準に従って実施した木クレオソートの発がん性試験安全性試験のデータを、NTPに対して提出しました。その結果、2002年12月、NTPは誤解を認め第10版発がん性物質報告書(10th Report on Carcinogens 2002)が改訂され、発がん性物質リストから木クレオソートが削除されました。
 EPAに対しても使用制限物質報告書の訂正を依頼しておりましたが、2006年6月、木クレオソートと石炭クレオソート(日本工業規格(JIS) クレオソート油)が別の物質であることが認められ、木クレオソートが使用制限物質報告書の発がん性物質リストから削除されることになりました。

米国毒物プログラム(National Toxicology Program, NTP):米国の各省庁が実施している化学物質の毒性研究をまとめ、発がん性物質の分類や試験を行っている機関

※※米国環境保護庁(Environmental Protection Agency :EPA):日本の環境省に相当する機関

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