社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

「メロン熊」裁判

2014年9月 8日

今回は、北海道夕張市のゆるキャラ「メロン熊」をめぐる裁判について、書いていきます。

「メロン熊」というゆるキャラをご存知でしょうか。

このキャラクターは、北海道夕張市でドライブインを営む店の店長(今回紹介する裁判の被告会社の代表者です)により考案されたもので、「知人のメロン農家が熊(ヒグマ)の食害に困っているとの話から、メロンを食べ過ぎた熊の様子を想定した「メロン熊」という名称の、ヒグマが夕張市特産のメロンに顔を突っ込んだデザイン」(今回紹介する裁判の判決文より)になっています。

(具体的にどのようなキャラクターであるかは、検索サイトにて「メロン熊 画像」のワードで検索すれば見ることができます。)

この「メロン熊」のキャラクターを使って、ストラップやマグネット、ボクサーパンツ等様々なグッズが販売されています。

この「メロン熊」の使用に対し、「melonkuma」の商標を有する原告が、商標権侵害を理由に約1,000万円の損害賠償を求めたのが今回紹介する裁判です。

今回の事件は、「メロン熊」と「melonkuma」とが類似しているかどうかも争点の1つではありますが、メインとなる争点は、『「melonkuma」商標を有する原告の権利主張が権利濫用にあたるかどうか』です。

上記争点を理解するために、背景事情を説明すると、被告が使用している「メロン熊」という名称は、以下の経緯で全国的に周知著名な表示となりました。

・「メロン熊」が考案されたのは、平成21年9月頃で、当時、この「メロン熊」キャラクター(以下、本件キャラクターといいます)をかたどったマグネットを販売したところ、この商品が人気商品になったことから、平成22年4月頃には本件キャラクターはマグネット以外の商品にも使用されるようになりました。

・そして平成22年9月までには、本件キャラクターをかたどった着ぐるみが様々なイベントに参加し、いわゆるUFOキャッチャーの景品にもなったことから、日本おみやげものアカデミーグランプリ「旅先でお土産として買ってみたい賞・非食品の部」で1位を獲得する等周知著名性を獲得するに至りました。

・その後も被告会社は、全国の「ご当地キャラ」「ゆるキャラ」が集まるイベントや全国各所で開催される北海道物産展等に本件キャラクターを参加させ、観光ガイドブック等に本件キャラクターを登場させるなど、「メロン熊」の周知著名性の維持に努力しています。

加えて被告会社は、平成22年10月に「携帯電話機用ストラップ」を指定商品として「メロン熊」の商標を取得しました。

他方、「melonkuma」商標は、平成20年1月に登録され、取得したのは原告以外の会社であり、原告はそれを平成22年11月に譲り受けたのですが、この商標は取得した元の会社においても、そして原告においても使用されていませんでした。

(そのため被告からの「melonkuma」商標登録取消審判請求により、この商標の登録を取り消す旨の審判が特許庁より下されました。)

以上の事情から、上記で述べた争点を言い換えれば、「使用実績のない商標の権利者が、周知著名な表示に対して、商標権に基づく権利行使ができるかどうか」です。

この点について、裁判所は、「原告の権利行使は権利濫用にあたり、許されない」とし、原告の請求を認めませんでした。

裁判所は、「melonkuma」という商標自体、原告の信用を表すものではなく、顧客を吸引する力もない。また原告商標と被告表示との間で、その出所につき一般消費者への誤認混同のおそれが低いにもかかわらず、損害賠償請求を行うのは、本件キャラクターが周知著名性、そして強い顧客吸引力を得たことを奇貨として権利行使をするものであるとし、その請求は権利濫用にあたると判断しました。

ところで、「権利濫用」や「信義則違反」は「一般条項」と呼ばれ、民法に規定があるものの、その文言の抽象性から、裁判でこれを主張しても、この主張が認められるのはかなり難しいといわれています。

また今回の裁判では、権利濫用の有無の判断をせずとも、原告商標と被告表示の類否判断、誤認混同のおそれの有無の判断で、いずれも消極の判断をすることにより、原告の請求を認めないという結論に導くことはできました。

にもかかわらず、あえて裁判所が権利濫用の判断に踏み切ったのは、このような権利行使を今後も認めないという強い意思の表れだと思います。

ただ今回は、原告には商標の使用実績がなく、他方で被告表示は周知著名であるという特殊事情があり、仮に被告表示が周知著名になっていなければ、結論は変わったかもしれません。

今回の裁判からは、商標を持っていてもそれを利用していなければ、裁判によっても保護されないこと、仮に他社の商標と抵触していたとしても、周知著名性を獲得すべく努力していれば裁判所はそれを保護してくれることを学び取ることができます。

今回は、裁判の対象が有名な「ゆるキャラ」に関するものであったことと、争点が珍しかったことから取り上げさせていただきました。

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