社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

自分の逮捕歴が検索サイトに掲載!名誉棄損?

2014年8月11日

今回は、自己の逮捕歴が大手インターネット関連会社が運営している検索サイトに表示され、名誉を棄損されたとして、同社に対し提訴した裁判について、書いていきます。

本件は、京都市在住の男性が、大手インターネット関連会社が運営している検索サイトで自己の名前を検索すると、自己の逮捕事実に関する記事が表示されるとして、同サイト運営会社に対し、名誉棄損とプライバシー侵害を理由に、民法709条(不法行為)に基づき、上記記事の表示の差し止めと慰謝料約1,100万円の支払いを求め、京都地裁に提訴したものです。

原告の男性は、2012年12月に盗撮の容疑で逮捕され、翌年4月に執行猶予付きの有罪判決が出されましたが、現在も、同検索サイトでその男性の名前を検索すると、その男性の逮捕記事を転載したサイトのアドレスや記事が一部が表示されるようです。

報道によれば、男性は「犯罪は軽微で、私人でもあることから、判決確定後も、この表示が出続けるのは、名誉棄損に当たる。また、この検索結果の表示により再就職活動にも支障が出た」と主張。一方、サイト運営会社側は、「検索結果は、キーワードに関するウェブの存在や所在を示し、当社の意思内容は反映されていない。削除要請は元記事の発信者にすべきだ」と主張していました。

これら原被告の主張に対し、京都地裁は、原告の主張を認めず、その請求を棄却しました。

その理由ですが、報道によれば、大要以下のようです。

①同サイトの検索結果の表示によって、男性の名前が載っているサイトの存在や所在、記載内容の一部を自動的に示しているだけで、同サイトは自ら原告の逮捕事実を示していない。

②仮に原告の逮捕事実を示しているものと認められるとしても、小型カメラで盗撮したという特殊な犯罪事実で社会的な関心が高く、逮捕から1年半程度しか経過していない現時点では、公共の利害に関する事実であり、公益を図る目的も認められる。

③以上から、本サイト運営会社の行為には、名誉棄損やプライバシー侵害の不法行為は成立しない。

上記理由を理解するのに、少しだけ解説しますと、第三者に自己の名誉を棄損された場合には、民法の不法行為(709条)の条文に基づき、その第三者に対し損害賠償や名誉棄損行為の差し止めを求めることができますが、この名誉棄損は刑法にも規定があり、刑法230条の2は次の通り定めています。

「前条第1項の行為(名誉棄損行為)が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない」

つまり、たとえ他人のある事実を述べて、その他人の名誉を棄損した場合でも、その事実が「公共の利害に関する事実」であり、かつ「その目的が主に公益を図るもの」ならば、その事実が真実である場合、刑法上の名誉棄損罪には問われないということです。

このことは民法でも同様に考えられており、その名誉棄損行為が公共の利害に関する事実についてであり、かつその目的が主に公益を図る目的であるならば、不法行為は成立しないと考えられています。

今回の判決では、原告男性の逮捕記事の表示は、社会的に関心の高い事件の記事であり、また、逮捕から1年半しか経過しておらず、未だその関心は薄らいでいないという意味で、公共の利害に関する事実であり、公益を図る目的もある、と認定したものと思われます。

ただ、何年経過すれば、公共性、公益性がなくなるのか、またいかなる犯罪についても本判決が妥当するのかについて、本判決は明示していないようです。

この判決を受け、男性側が控訴するかどうかは現時点では不明です。

今回のような検索サイトに自己の個人情報が表示された場合、サイト運営会社に記事の削除を求めることができるかについては、海外の裁判所では、表示の削除を命じる判決も出ているようですが、日本の裁判所では、余り争われたことはなく、争われたとしても、今回の判決のように原告の請求を認めない傾向のようです。

しかしながら、現在の検索サイトの一般の人の使用頻度やそこから生じる影響力からすれば、犯罪歴や逮捕歴等個人情報の中でも特に保護の必要性の高いものについては、当該事実発生から何年以内に削除する、というような自主基準をサイト運営会社側でも設けるべきだと思います。

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