社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

集団的自衛権

2014年7月 7日

今回は、「集団的自衛権」について、書いていきます。

日本政府は、7月1日、これまでの政府見解を変更し、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更について閣議決定をしました。

ここで、まず問題点を整理するために「集団的自衛権」の定義と、この権利行使の可否を考える際に問題となる日本国憲法第9条の規定内容について見ていきたいと思います。

最初に、「集団的自衛権」とは、「他国に対する武力攻撃を、自国の実体的権利が侵害されていなくても、平和と安全に関する一般的利益に基づいて援助するために防衛行動をとる権利」と定義されます(芦部信喜「憲法(第三版)」(岩波書店)60頁)。

この「集団的自衛権」と対になる概念が「個別的自衛権」と呼ばれるもので、これは「外国からの急迫又は現実の違法な侵害に対して、自国を防衛するために必要な一定の実力を行使する権利」と定義されます(同書59頁)。

他方、日本国憲法第9条は、以下の2つの条文から成り立ちます。
「1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」

今回の政府の閣議決定は、この第9条の解釈に関するもので、具体的には同条第2項に定める「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」の文言に関係します。

これまでの政府見解は、憲法第9条の下でも、上記で述べた「個別的自衛権」つまり自国に対する違法な侵害があった場合に、自国防衛するための必要最小限度の実力を行使することは、国家固有の権利として否定されない。自国防衛のための必要最小限度の実力は、憲法第9条第2項に定める「戦力」にはあたらないから、同項にも違反しないとしてきました(この考え方から、政府は、自衛隊の存在も合憲としてきたものと思われます)。

これに対し、今回の日本政府の決定は、これまでの個別的自衛権の行使は当然の前提としつつ、以下の要件をすべて備えた場合には、わが国が必要最小限度の実力を行使できる権利、つまり集団的自衛権を行使できることを認めたものです。

①わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合
②わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない場合

また、発表された政府見解では、実際に自衛隊出動を命じる場合には、事前に国会の承認を得ることを法案に明記することも記載されています。

今回の政府見解は、上記で紹介した憲法第9条の解釈からそのように導けると政府は述べています。

しかしながら、一法律家の立場から見解を述べさせてもらうならば、今回の政府見解は、憲法第9条の解釈の枠を超えているのではないかと私は思います。

従来の政府見解であれば、憲法第9条第1項について、「国際紛争を解決する手段として」の戦争や武力行使の放棄を謳ったもの、つまりは侵略戦争としての戦争放棄等を謳ったものであり、自衛のための戦争は否定していない。第2項についても「前項の目的を達するため」とあるから、侵略戦争としての戦争放棄等の実効性を担保するための戦力の不保持であり、自国自衛のための戦力の保持は禁止されない、と解釈することにより、個別的自衛権のための実力を行使することはできる、との解釈を導くことは条文上からも可能でした。

しかしながら、今回政府の示した要件をたとえ備えたとしても、集団的自衛権を行使できるとの見解を導くことは、第9条の条文上からはかなり難しいと思います。

(「集団的自衛権」の定義を紹介した際に引用した憲法の教科書でも「日本国憲法の下では認められてない」とはっきり述べられています(同書60頁。なお同書の著者は、憲法を勉強している人にとっては知らない人はいない憲法の大家ともいえる学者です))

やはり私としては、集団的自衛権の行使を可能にしたいのであれば、日本国憲法の用意した憲法改正の手続きにより第9条を改正してから行うべきだと思います。

集団的自衛権の問題は、日米同盟の関係や国際情勢等様々な状況が絡み合い、憲法だけの問題ではないかもしれません。

しかしながら、だからこそ、議論の大前提である「集団的自衛権」の定義と、憲法第9条が一体何を、どのように規定しているのかを押えた上で、皆それぞれがこの問題について考えを深めていくことは有用であろうと思い、今回、取り上げさせていただきました。

最後に、今回のブログ中で述べた見解は、私の個人的見解であり、当社や私が所属する弁護士会等の見解ではないことを申し添えさせていただきます。

また、長期間、本ブログを更新せず申し訳ございませんでした。今後は、できるだけ頻繁な更新を心がけますので、今後とも本ブログをよろしくお願いいたします。

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