社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

ストリートビューはプライバシー侵害か?

2014年3月17日

今回は、グーグル社のストリートビューによりプライバシーを侵害されたとして、同社を提訴した事件について語っていきます。

報道によれば、原告は福岡市在住の女性で、グーグル社のストリートビューにより自宅のベランダに干していた洗濯物を撮影、公開され、プライバシーを侵害されたとして、2010年10月、同社を被告として60万円の損害賠償請求訴訟を福岡地裁に提起しました。

これに対し、1審の福岡地裁は、ストリートビューにより原告のプライバシーは侵害されていないとして、原告の訴えを退け、その後、福岡高裁に控訴しましたが、福岡高裁も同様の判断をして、女性の控訴を退けました。

そして、この女性は、昨年7月、福岡高裁の判断を不服として最高裁に上告受理の申し立てをしましたが、今月4日、最高裁はこの上告を退け、女性の敗訴が確定しました。

判決文が入手できないため、判断内容の詳細は把握できないのですが、分かりうる範囲で解説すれば、今回の裁判の争点は、個人の顔や姿形以外の個人の私的事項にもプライバシーの侵害が成立するのかどうかだと思われます。

今回問題となったストリートビューは、この女性の顔や姿形を無断で撮影し公開したわけではありません。

あくまでも女性の住んでいた家のベランダに干されていた洗濯物です。

この洗濯物の無断撮影や公開もプライバシー侵害にあたるかどうか、これが本件における法律上の争点だと思われます。

実はこの点については、従来から裁判所の判断があり、個人の顔や姿形については、いわゆる「肖像権」として民法上保護されるとともに、「肖像」以外の個人の私的事項についても、「私生活をみだりに公開されない権利としてのプライバシー権がある」との判断を示していた裁判例が存在していました。

そして、2審の福岡高裁は、この裁判例を意識してか、「個人の顔や姿形以外の個人の私的事項についてもそれを無断で撮影する行為はプライバシー侵害にあたる」という判断をしました。

(この福岡高裁の判断は、最初に紹介した裁判例を意識したかどうかは不明ですが、法律実務家であれば誰でも知っているような有名な事件ですので、当然意識したものと思います。)

グーグル側は、「撮影行為自体は違法ではない」と主張していたようですが、福岡高裁はこの主張を退けたのです。

一方で、福岡高裁は、実際の画像では女性の洗濯物が干してあるのかどうか分からず、受忍限度の範囲内であるとして、結局は女性の訴えを退けました。


ところで、皆さんもストリートビューサービスを利用されたことがあると思いますが、かなり鮮明で、道が分からない時などには本当に役に立つサービスです。

また外国の映像に至っては、私などはまさにその国に旅行にいっているような気分になることもあります。

一方で、家の外観や、場合によっては表札もはっきりとは見えませんが、うっすら見えてしまう場合もあり、「これ、プライバシーの観点から大丈夫なのか」と思われた方もおられるのではないでしょうか。

そういった意味で今回の裁判は、いつか誰かが起こすだろうと思われた裁判だったと思いますが、今回最高裁まで争われ、プライバシー侵害ではないとする判断が確定してしまった以上、今後はストリートビューについて争うことは難しくなるものと思います。

今回の福岡高裁の判断や従来からの裁判例からの考え方からすれば、個人の家の洗濯物(その中には下着も含まれていました)を無断で撮影し、かつインターネット上で公開する行為は、まさに「私生活をみだりに公開する行為」としてプライバシー侵害と認定できそうなものでしたが、結局は、福岡高裁も「洗濯物が干してあるかどうかは分からない」として女性の訴えを退けました。

しかしながら、原告の女性としては「洗濯物が写っている」と思って、弁護士に相談し、裁判まで起こしたのですから、女性にとっては確かに「洗濯物が写っている」ように見えたのでしょう(そうでなければ、時間も費用もかけ、弁護士まで使って裁判をしようなどとは思わないでしょう)。

そういった意味では、裁判所への証拠の出し方、証拠の見え方によって判断が別れてしまったともいえ、非常に「悔しい」裁判であったといえると思います。

自分がこうだと思っても、第三者にそれを認めてもらうのは難しいですね。

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