社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

不法行為の消滅時効

2014年3月25日

今回は、不法行為の消滅時効について語っていきます。

まず「不法行為」とは何かについてですが、交通事故や喧嘩等により相手を怪我させたりする場合のように、「故意又は過失により相手の権利・利益を侵害し、相手に損害を加える行為」を言います。

交通事故の場合のように、相手の身体に現実に損害を加えていない場合であっても、相手の名誉やプライバシーを侵害し、精神的な損害を与えた場合でも、「不法行為」に該当します。

さらに、婚姻関係にある男女の一方が第三者と「不貞行為」に及ぶことによって、他方の配偶者に精神的苦痛を与えることも「不法行為」にあたります(ちなみに、配偶者ある者と不貞行為に及んだ第三者も、不貞行為時に相手に配偶者があることを知っていたのであれば、その第三者も不法行為責任を負い、他方配偶者に慰謝料を支払わなければなりません。)

ところで、この不法行為も消滅時効(一定期間が経過すると権利が消滅し、相手に損害賠償等を請求することができなくなることをいいます)があり、3年経過すると損害賠償請求をすることができなくなってしまいます。

この「3年経過すると権利が消滅する」ことは知っている方もいるかと思いますが、ではいつからこの消滅時効は計算されるのでしょうか。

この点、民法724条第1項は次の通り規定しています。

「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が『損害及び加害者を知った時』から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。」

このように「損害『及び』加害者」とありますから、不法行為による「損害」を被害者が認識しただけでは足りず、その「加害者」も被害者が認識していなければ時効期間の計算は開始されません。

(どうでもいい話ですが、過去の司法試験の短答式の問題で、「不法行為の消滅時効の起算点は損害又は加害者を知った時からである」というひっかけ問題が出されたことがありました。)

このことを具体的に説明すると、自分が交通事故に遭い怪我をした場合(全て相手方に非があることを前提にします)を想定すると、交通事故による怪我という「損害」は認識しています。

しかし仮に、加害者が事故後現場から逃走をして、加害者がどこの誰なのか分からない場合、事故発生の時点では時効期間の計算は開始されず、被害者が加害者の住所氏名を認識した時に初めて計算が開始されます。

別の例で説明すると、最近のテレビドラマでもあった事例なのですが、婚姻関係にある夫婦の夫が、ある女性と不貞行為をしましたが、その男性の妻は夫に慰謝料請求をせず、3年が経過しました。

そのため、夫に対する慰謝料請求は時効が完成し、消滅してしまいますが、その妻は夫の不貞行為時、夫の不倫相手の住所や名前を知らず、夫への慰謝料請求の時効完成後にそれを知ったため、不倫相手に対する慰謝料請求権は時効が完成せず、慰謝料請求をすることができるのです。

(同じ不法行為なのに時効成立が人によりバラバラというのは信じがたいことですが、今の民法の解釈ではそうなります。)

以上の例から分かる通り、今回紹介した「不法行為の消滅時効の起算点の問題」は意外に盲点で、ある人に損害を与えてしまった場合に「3年経過したから大丈夫」と安易に考えるのは危険です。

もっとも、加害者を知らなければ永久に時効が完成しないのかというとそういうわけではなく、損害及び加害者を知っているか否かに関わらず、「不法行為から20年」で消滅時効が完成します。

契約上の債務不履行責任は、誰かと契約をしなければ、問われることのない責任ですが、今回紹介した不法行為責任は、交通事故の例からも分かる通り、以前から契約関係がなくても成立しうる責任ですので、日常生活を送るにおいても理解しておいて損はないものです。

今回紹介したプチ法知識も活かしながら、日常生活を賢く過ごしていきたいものですね。

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