社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

保険金不払い問題と監督官庁の対応

2014年2月18日

今回は某損保会社による保険金不払い問題とそれに対する監督官庁の対応について語っていきます。

先日、某損保会社が、自動車保険に付随する対人臨時費用を不払いにしていたことが報道されました。

この対人臨時費用ですが、交通事故の加害者が相手方である被害者を見舞った場合に支払われる保険金で、1万円~10万円の範囲で支払われるそうです。

報道によれば、不払い件数は12万件にも上り、この保険会社は、判明した分は遅延損害金に上乗せして支払うと発表しています。

しかし、今回判明した不払いの保険金は、2002年4月から2003年6月までの期間に発生した事故に係るもので、対象者も当時の資料は残していないと思われます。

また、仮に資料を残していたとしても、10年以上前の資料を掘り起こして保険金を請求すること自体、相当の時間と労力を要すると思いますので、1万円から10万円の範囲の保険金をもらうためにそこまでする人がさほど多いとも思えません。

以上からすれば、今回不払いが発覚した保険金を実際に受領できる人はそう多くはないと思われます。

惜しむべきは、2005年に、この保険会社を指導する監督官庁が、今回の保険会社を含む損保会社に対し、2002年4月から2005年6月までの、今回問題となっている臨時費用を含む付随保険等の不払い件数を調査報告し、加入者に通知するよう求めていたにもかかわらず、今回問題になった臨時費用の分は加入者への通知の対象から漏れていたことです。

これについて保険会社は、2002年4月から2003年6月までの臨時費用については「請求がなければ支払わない社内運用にしていた」と説明しています。(つまり「請求されていないものを支払わないのは、不払いではない。よって加入者に通知しなくても問題はない」という趣旨だと思われます)

しかしこのような説明で加入者は納得するのでしょうか。

仮に2005年当時加入者に通知されていたら、さほど時間も経過していませんので、資料が残っているケースもあったでしょうし、契約通りに保険金が支払われたケースも多かったに違いありません。


そして、ここ最近問題になっているのが、この保険会社が「請求がなければ支払わないとする社内運用」を理由に、臨時費用を加入者への通知の対象から除外していたことについて、当時の監督官庁がそれを了承していたことです。

しかも、この保険会社以外の損保会社には、請求がなかったとして不払いにしていたケースでも対応するよう求めていたにも関わらず、この保険会社にはその例外を認めていたということで、この監督官庁に対する批判は益々広がっているようです。


今回責められるべきは、不払いをしていた保険会社にあるでしょう。

しかし、それを監督する官庁が、いわばその不払いを黙認していたことが批判を呼ぶことになりました。

しかも他の会社には厳しい対応を求めていたにもかかわらず、です。

このように、ある不祥事が起こった場合に、それを監督する側がそれを容認し、しかも合理的な説明がつかない不公平な取り扱いをすれば、不祥事を起こした当事者と同等、いやそれ以上に監督する側が批判を受けることになることをこの事例は教えてくれます。

そしてこのような事象は、会社内でも起こりうると思います。

例えば、ある社員が不祥事を起こした場合に、社員を監督する立場にある者がその不祥事を黙認し、かつ他の社員には厳しく対応するにもかかわらず、当該事件を起こした本人には、合理的な理由もなく(自分と同期である、飲み仲間である等)、甘い対応をするようなケースがそれにあたると思います。

このような対応をすれば、実際に不祥事を起こした社員以上に、監督する立場の人は社内から厳しく批判されるでしょうし、何より信頼を失ってしまうことになります。


そういった意味で、今回の一連の出来事、特に今回の監督官庁の対応やそれに対する報道機関のリアクションは、会社内で社員を監督する立場にある人は、他山の石にすべきことであると私は思います。

監督者にとっては、「とはいえ不祥事を起こした者が一番悪いのでは」と思いたくなる気持ちも分からなくはないですが、「不祥事に対しては、誰でも公平に指導、監督するのが自分に与えられた職務である」と割り切って、職務を遂行するしかないと思います。

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