社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

黒塗り裁判

2014年1月20日

今回は、いじめ問題に関するアンケートの大部分を黒塗りにして開示した某市に対する慰謝料請求訴訟について語っていきます。

報道によれば、某市の中学校で起こったいじめ問題で、自殺した生徒の父親が、この中学校に対し、同学校が実施したいじめ問題に関するアンケート結果の開示を求めたところ、大半が黒塗りされたアンケート結果を開示されたことに加え、その内容を第三者に開示しないことを誓約させる確約書の提出も求められました。

そのため、父親はさらに市に対し、アンケート結果を開示するよう求める情報公開請求を行いましたが、それにより開示されたものも大半が黒塗りされたものでした。

そこで父親は、上記のような確約書を取られた挙句、開示されたアンケート結果も大半が黒塗りされ、精神的苦痛を被ったとして、市に対し、慰謝料100万円の請求を求めたのです。

これに対し裁判所は、市に対し、慰謝料として30万円を、この父親に支払うよう命じる判決を下しました。

報道によれば、裁判所は「自殺の原因調査のためにアンケートを利用しようとした親の心情は理解できる。アンケート内容の一切の利用を禁止する確約書を求めた市側の対応は違法で、個人名以外まで不開示とした処置も不適切」と述べ、市側の対応を厳しく批判しました。

その上で父親の精神的損害としては30万円が相当であるとして、上記判決を下したのです。

今回の判決は、地方裁判所レベルの判決ですので、被告である市としては控訴できるのですが、報道によれば、市側は控訴しない方針のようです。

ところで、今回の裁判で珍しいところは、アンケート結果の大半を非開示にされた場合、更なる情報公開を求め、行政に情報公開をすることを命じるよう裁判所に求める、というのが通常の流れであるところ、上記非開示状態を前提に、このような対応により被った精神的損害の賠償を求めた点です。

これについては、このアンケートが、同市議会の委員会の傍聴者に、黒塗りせずに配布されていたことに理由があると思われます。

つまり、上記委員会にて傍聴人に配布されたアンケートを父親が入手したため、更なる情報公開請求は必要なくなり、また第三者に口外しない旨の確約書までとられたにもかかわらず、それを求めた市自らが第三者である傍聴者にアンケートを配布しその内容を口外したこと、更には、最も利害関係のある父親には大半を黒塗りにして開示したのに、上記の傍聴者には黒塗りせずに開示したことから、上記の慰謝料請求になったものと推測されます。

それにしても、途中でトップである市長の交代があったとはいえ、一連の市の対応はちぐはぐで、一貫性が全くありません。

なぜ市側は当初、アンケート内容を必要以上に黒塗りにしたのでしょうか。

個人情報を理由にするのであれば、本判決も述べている通り、回答者のみを非開示にすれば済んだはずです。

また、市議会の傍聴人に黒塗りしていないアンケート内容を開示したことも全く理解できません。

明らかに原告である父親の心情を逆なでする行為です。

私も組織に所属していますから、組織を防衛したいという心情は分からなくもないですが、やはり相手の気持ちに配慮することが非常に重要であり、その点を誤ると法的責任を負ってしまう場合もあることを示したのが今回の判決です。

そういった意味で、今回紹介した事件は、私たちに様々なことを気づかせてくれるものだと感じました。

(ちなみに、今回の裁判の慰謝料請求額は100万円で、市側もさほど争っていなかったにもかかわらず、支払を命じられた額は30万円でした。前回紹介したように、名誉棄損事件に限らず、慰謝料請求で満額を認められるのは難しいですね。)

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