社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

パワハラ訴訟

2013年12月24日

今回は、いわゆるパワハラをめぐる訴訟について語っていきます。

今年は、「ブラック企業」という言葉が注目され、流行語大賞にもノミネートされるほどでした。

厚生労働省も事態を重く見て、「ブラック企業」(同省の発表では「若者への『使い捨て』が疑われる企業」と定義されていました)と疑われる企業に対し重点調査を行い、そのうちの約8割の企業に対し、労働基準法等の関係法令違反を指摘したそうです。


そのような中、今月報じられたパワハラをめぐる裁判を2件紹介します。

1件は某生命保険会社を被告とする裁判です。

事件の概要ですが、報道によれば、原告は同社の元上司から、成績不振を理由に「組織を潰すんか」などと繰り返し叱責を受け、またこの元上司が女性が獲得した契約を他の社員の成績として処理するよう求めたのに対し、女性がそれを拒むと、「あほちゃうか」などと暴言を吐かれたこと等によりうつ病になり退職に追い込まれたとして、保険会社側に慰謝料として約6,300万円の損害賠償を求めたものです。

結果は、保険会社側が、原告に4,000万円を支払うことで和解が成立しました。

なお、本事案では、すでに国の労災を認定する機関が、元上司の上記行為と原告がうつ病になったこととの因果関係を認め、労災認定した事案でした。

よって上記事案では、元上司の行為がパワーハラスメントに該当するのか否かについては、さほど争いになっていなかった事案であったと思われます。

もう1件の事案は、某証券会社を相手とする裁判です。

事件の概要ですが、報道によれば、原告は、元上司から、原告がミスを繰り返していたこともあり、営業目標が達成できない場合には原告の所有車(外車)を売却するよう求められ、また退職届も書かせたりするなどして、退職を余儀なくされたとして、会社側に約530万円の損害賠償を求めたものです。

会社側は、所有車売却の提案について、「原告の発奮を期待しての発言」と主張していたようですが、裁判所は、「私的な生活面に及ぶ過度の心理的負担を与え、違法」と認定し、退職届の提出も「注意・指導のための言動として許容される限度を逸脱した」と判断しました。

その上で裁判所は、会社側に25万円の支払いを命じる判決を下しました。

1件目の事件と違い、2件目は、まさに元上司の行為がパワーハラスメントに該当するかどうかが争われ、裁判所はパワーハラスメント該当性を認めました。

ただ、認められた金額は「25万円」と、相当低額のように思われますが、裁判所は何を根拠にこの金額をはじき出したのでしょうか。

この金額では原告の弁護士費用すら賄えたのかすら疑問です。

ちなみに2件目の事案では、原告は退職をする前に、同社のパワハラ対応窓口に相談していたのだそうです。

これを聞いて、この窓口はいったいどのような対応をしていたのかと思いたくなるところですが、おそらく、これは私の想像ですが、元上司へのヒアリングは実施したはずで、元上司からは「原告の発奮を期待としての発言」との説明を受け、その説明も全く不合理というものでもなかったことから、それ以上踏み込んだ対応はなかなか難しかったのではないかと思われます。


ともあれ、今回紹介した2件(特に2件目)ともに、元上司の行為はパワーハラスメントなのか、それとも指導の一環なのか、なかなか判断が難しいケースではあると思います。

最近では、今回のような上司から部下へのパワーハラスメントだけでなく、部下から上司のパワーハラスメントの事案も出てきているようで、部下を持たれる方にとっては益々厳しい世の中になってきているように感じます。

また、次元は違いますが、教育現場における「体罰」に対しても非常に厳しい目が向けられています。

「人を動かす」ことについては、多くの書籍があり、あるビジネス雑誌では特集もされているほど有名なテーマではありますが、このような世の中であるからこそ、今一度、「人を動かす」ことについて、真剣に考える時期が来ているのかもしれません。

来年は「ブラック企業」という、文字通り暗い言葉が流行語にならないことを願いたいものですね。

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