社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

性別変更と父子関係に関する最高裁決定

2013年12月16日

今回は、女性から性別変更した男性と、人工授精により誕生した子との父子関係を認めた最高裁決定について、語っていきます。

今回で、本ブログは100回目を迎えました。

本ブログを読んでいただいている皆さん。大変ありがとうございます。

今後も「セイロガン糖衣A裁判」が続く限り、本ブログを続けていくつもりですので、よろしくお願いします!

さて、その「セイロガン糖衣A裁判」も上告受理申し立てをしている最高裁で、先日、かなり思い切った決定が出されました。

それが今回紹介する裁判です。


ところで、最高裁での事件で、過去には、非嫡出子の相続分を嫡出子のそれの半分とする民法の規定について、憲法14条に定める法の下の平等に反するとした最高裁決定を紹介しました。

この決定後、国会では上記規定の改正作業が行われ、12月5日、非嫡出子と嫡出子の相続分に差を設ける民法の規定を削除する民法改正案が国会で成立し、同月11日、その改正案が公布・施行されました。

よって現在では、非嫡出子と嫡出子の相続分は平等になっています。


さて本題に戻りますが、今回の事件は、性同一性障害のため女性から性別変更した男性とその妻が、第三者からの精子を使用した人工授精により誕生した子について、その夫婦の子として出生届を出したところ、その男性は父とは認められず、その妻の子としてのみ戸籍に記載されたことから、男性をその子の父とする記載に戸籍を訂正するよう求めた審判です。

本事件の争点は、男性と子との間の父子関係を認定するに当たり、「妻が婚姻中に懐胎(妊娠)した子は夫の子と推定する」と定めた民法772条が適用されるかどうかです。

これが適用されれば、その子は、男性と妻との婚姻中に妊娠し出産した子であることは明らかですので、男性と子との親子関係は認められます。

他方、男性に性別変更した者とその妻とは、およそ性的関係により子をもうけることは想定できないから、同条を適用する前提を欠いている、と考えれば、男性と子との間の親子関係は否定されることになります。

男性から出された出生届に対し、戸籍には妻の子のみの記載をし、男性を父とは認めない処理をした地方公共団体、そして本事件の第1審、第2審ともに、後者の考え方に従って民法772条は適用されないとし、戸籍の訂正を認めませんでした。

しかし、これらに対して最高裁は、上記判断を覆し、男性とその子との間にも民法772条が適用されるとして、父子関係を認め、戸籍の訂正を命じました。

最高裁は、性別変更の根拠法である性同一性障害特例法が、性別変更した者は、法律に特別な規定がある場合を除き、他の性別に変わったものとみなす旨の規定を設けており、男性に性別変更した者は、以後法令の適用においては男性とみなされるため、民法に基づき夫として婚姻もできるのであるから、その妻との婚姻中に妊娠してできた子は、民法772条により夫の子と推定されるしかるべきだと述べています。

また、男性に性別変更した者とその妻とは性的関係により子をもうけることはおよそ想定できないとの主張に対しても、上記特例法により夫として婚姻することを認める一方で、その主要な効果である民法772条に基づく推定を、性的関係により子をもうけることができないという理由だけで認めないのは相当でないと述べています。

(なお、本決定に加わった裁判官による補足意見では、民法772条により夫の子であるとの推定を認めることは、子にとっても「父を確保する」という意味で、子の利益にかなうものである、と述べられています。たしかに本件のような第三者の精子提供による人工授精で生まれた子を想定した場合、同条の推定を認めなければ、永久に父は不明のままかも知れません。)

本件、生物学的には父子関係がないことは明白であるにもかかわらず、法律上の父子関係を認めたという点で、最高裁としても相当思い切った判断だったと思います。

なお、本件は5人の裁判官が担当されましたが、そのうち2人は今回の結論に反対しており、賛否が拮抗していた状況が伺えます。

最高裁での事件については、本ブログでもいくつか取り上げていますが、特に最近は、今回のような思い切った判断をし、マイノリティーを保護しようとする姿勢が伺われます。

ただ、最高裁も事件もないのに勝手に判断を下すことはできません。

やはり我々が事件において、争点や主張を明確にし、場合によっては裁判所が勝訴判決を書きたくなるような理論構成を示したうえで、最高裁が思い切った判断ができるお膳立てをしなければなりません。

そういった意味で、今回の紹介したような判断が下されるのかどうかは、弁護士の力量にかかっているのかもしれません。

ますます身の引き締まる思いです!

[カテゴリー:]

< 遺族補償年金受給制限違憲判決 記事一覧 パワハラ訴訟 >

y[Wgbv