社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

衆議院議員定数不均衡訴訟最高裁判決

2013年11月26日

今回は、先日最高裁判決が出された、衆議院議員定数不均衡訴訟について語っていきます。

本訴訟は、昨年12月に実施された衆議院議員選挙において、議員1人あたりの有権者数に最大で2.43倍の開きがあったことから、同選挙は投票価値の平等を求める憲法14条1項(法の下の平等)に違反し、無効にされるべきだとして、弁護士グループが提起したものです(弁護士がクライアントから依頼を受けたものではなく、弁護士自らが起こしたものです)。

今回の訴訟の対象である昨年12月の衆議院議員選挙は、2009年に実施され、最高裁より「違憲状態」にあったとされた前回の選挙よりも格差が拡大しており(前回は2.3倍、今回は2.43倍)、かつ選挙区割りも、衆議院が急に解散されたこともあり、2009年と同じのまま実施されました。

そのため、原審である各地の高裁では、今回の選挙に厳しい態度を示すものが多く、憲法に違反すると判断することは勿論、選挙も無効にする(つまり選挙をやり直しにする)という1歩踏み込んだ判決まで出す裁判所も出現するようになりました。

そういった中で、今回、最高裁がどのような判決を下すのか注目されました。

ここで、判決内容の解説に入る前に、これまでの最高裁におけるこの問題を検討するうえでの判断枠組みについて説明します。

最高裁は、議員定数不均衡問題について、以下の3点から検討を行ってきました。
①その選挙における1票の格差が投票価値の平等を求める憲法14条に違反する状態に至っているか
②憲法14条に違反する状態に至っている場合において、国会において憲法上要求される合理的な期間内に是正がなされず、憲法の規定に違反するに至っていたか
③憲法違反に至っている場合、その選挙を無効にするのか

つまり、上記①が認められれば、その選挙は「違憲状態」になります。

そして「違憲状態」になっていたにもかかわらず、国会において合理的期間内に違憲状態に対する是正がなされなかったということになれば、その選挙は「憲法に違反するに至っている」、つまり「違憲」ということになります。

その後、上記③の検討に入り、選挙を無効にするかどうかが決定されます。

(これまでの最高裁では「違憲状態」を超えて「違憲」と認めたものはありましたが、さすがに選挙を無効にしたものはこれまでありません。なお、2009年の衆議院議員選挙に対し、最高裁は「違憲状態」のみを認定し、「違憲」とまでは認定しませんが、このような判決を、専門家の間では「違憲状態判決」と呼ぶことがあります)。

以上のような予備知識を入れた上で、先日の最高裁判決の解説に入っていきますが、最高裁は、今回の衆議院議員選挙について、2009年の選挙の時と同様、上記①を肯定し、「違憲状態」にあるとしながらも、その状態について合理的期間内に是正がなかったとはいえないとして、上記②を否定し、弁護士グループの主張を退けました。

つまり結論だけを見ると、同じく「違憲状態」にあるとしつつも「違憲」とはしなかった2009年の選挙に対する最高裁判決と同様の結論になったということになります。

ただ、今回の判決が従来の判決と異なる点は、これまで最高裁にて、選挙が「違憲状態」にあるとされても、国会に何らかの是正義務が当然生じるとまでは述べていませんでしたが、今回の判決では選挙が「違憲状態」と判断されれば、国会において「これを是正する責務を負う」と最高裁がはっきり明示したことです。

これにより、仮に「違憲状態」という司法判断が出たにも関わらず、国会において漫然とこれを放置し、何らのアクションもとらなかったということになれば、国会は不作為責任(何もしないことの責任)を問われ、国家賠償を命じられることになるかもしれません。

一方で上記②の検討、つまり違憲状態に対し、国会において合理的期間内に是正がなされているか否かを判断するに当たっては、期間の長短だけでなく、「是正のためにとるべき措置の内容、そのために検討を要する事項、実際に必要となる手続きや作業等の事情を考慮し、国会の是正に向けた取り組みが相当なものかどうかという観点から判断すべき」とも述べました。

この点も特にこれまでの最高裁判決では言及がなかった点です。

なお、今回の判決に加わった14名の裁判官のうち、3名が上記②を肯定、つまり「違憲状態」であるのに、国会がこれを合理的期間内に是正せず、憲法に違反するに至っていた、つまり「違憲」である、と判断しています(ただ3名とも選挙は無効にすべきでないとしています)。
ところで、この議員定数不均衡訴訟は、何十年も前から、選挙が行われる度に提起され、毎回最高裁まで争われています。

にもかかわらず、これまで一度も「違憲無効」と判断されるには至っていません。

しかしながら、このブログでも取り上げた、非嫡出子の相続分に係る民法の規定も幾度にわたる訴訟の末、違憲と判断され、国会では民法改正の手続きが取られているようです。

今回取り上げた議員定数不均衡訴訟でも、最高裁は従前の判断枠組みを維持しながらも、従来よりも少し踏み込んだ判断をしました。

これらの裁判を見るたび、「戦い続けていくうちに、現状を変えられるものもある」ことを実感します。

今回の事件は私にとって、和解で終結すべき事件も当然あるが、最後まで戦うべき事件もやはりあることを再認識させる事件の1つです。

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