社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

自動車運転死傷行為処罰法案

2013年11月11日

今回は先日、衆議院を通過した自動車運転死傷行為処罰法案について、語っていきます。

現在、国会では重要法案がいくつも審議されていますが、その中で、11月5日、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案」、いわゆる「自動車運転死傷行為処罰法案」が衆議院を通過したというニュースが報道されました。

これは、栃木県で発生した、てんかん発作をおこしたクレーン車の運転手による複数の児童の死亡事故や、京都府内での無免許の少年による複数の児童の死亡事故を受け、検討されていた法案です。

詳しく説明しますと、これまで悪質な自動車事故については、刑法上の危険運転致死傷罪(最高刑は懲役20年)ないしは自動車運転過失致死傷罪(最高刑は懲役7年)が適用されていましたが、危険運転致死傷罪の適用要件が厳しかったこともあり、上記の2つの事故には、同罪が適用できず、罪の軽い後者を適用せざるを得なかったという問題がありました。

そこで、上記の2つの事故のようなケースにも厳罰を処せられるようにと同法案が本国会に提出され、このたび衆議院を通過することになったわけです。

では具体的にこの法案について、従来と違う点を中心に説明します。

これまで、危険運転致死傷罪が適用されるためには、「アルコールないし薬物の影響を受けて、正常な運転が困難な状態で自動車を運転すること」を運転時に認識していることが必要でした。つまり、「自分は今、相当お酒を飲んでいる。このまま車を運転すれば正常な運転は難しいだろう。でも車を運転しよう」と運転時に思っていなければならなかったわけです。

しかしながら、車の運転を満足にできないくらいお酒を飲んでいて、上記のような(ある意味冷静な)認識を持つことはほとんどありませんし、持っていたとしても、取り調べの時には、運転手は運転時のことをほとんど覚えていないでしょう。

現実にもこの運転時の認識を検察が立証することが難しいということもあって危険運転致死傷罪の適用が見送られたケースもあったようです。

そこで今回の法案では、アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、その結果、死傷事故を起こした場合、傷害で最高12年、死亡で最高15年の懲役とする規定が新たに設けられました。

この規定により、運転手には運転時に「アルコール又は薬物の影響により、正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転すること」、つまり「自分はお酒をのんでいるため、このまま車を運転すればもしかすると正常な運転に支障が起こるかもしれない。でも車を運転しよう」という認識があればよく、従来の危険運転死傷罪に比べれば、運転手の認識についての検察の立証レベルは下がるのではないかと思われます(ただ、これも程度問題で、難しいことに変わりはありませんが)。

それともう1つ、自動車の運転に支障を及ぼす病気の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し、その結果、死傷事故を起こした場合でも、今紹介した規定と同様の罪に処する(傷害で最高12年、死亡で最高15年の懲役)規定が新たに設けられました。

これは冒頭紹介した栃木県でのクレーン車の運転手による事故を想定したものです。

さらに、飲酒運転により死傷事故を起こした場合で、飲酒運転であることを分からないようにするため、更にアルコールを摂取することや、事故現場を離れてアルコールを抜く行為等について、最高で懲役12年に処する規定も新たに設けられました。

また従来からの危険運転致死傷罪が適用される事故や、上記で紹介したアルコールや病気等により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で車を運転し、死傷事故を起こした場合で、これに加え無免許運転も発覚した場合には、それぞれの罪を加重する規定も設けられています(上記で紹介した規定の場合ですと、傷害の場合、12年→15年の懲役、死亡の場合、15年→20年の懲役)。

以上が今回の法案の主な内容です。

本法案では、京都府での事故の遺族が求めていた、無免許運転そのものに危険運転致死傷罪を適用できるようにすることは盛り込まれませんでしたが、無免許の場合には、更に罪を重くするなど一定程度配慮した形跡は伺えます。

車の性能の向上等により死亡事故自体は年々減っているようですが、自動車による悪質かつ痛ましい死傷事故に対する社会の目や法律の規定は益々厳しくなっていきます。

自動車を運転する皆さん。ちょっとした出来心で人生を破滅させないよう、お互い気を付けていきましょう!!

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