社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

誤表示と偽装

2013年11月 5日

今回は、某ホテルによる料理メニューの表示問題について、語っていきます。

某有名ホテルによる料理メニューの表示問題。最初に問題が発覚したこのホテル以外にも、様々なホテルに波紋が広がっており、不適切な表示があったことを認めるホテルも次々と出てきています。

もともとは主に原産地の表示に焦点が当たっていたように思いますが、最近ではアレルギー物質が含まれる食材の表示に焦点が移ってきているように思います。

ところで、報道によれば、最初に問題が発覚した某ホテルの会見で、ホテル側は問題の表示について、「知識不足や連携の悪さによる『誤表示』である」と説明していました。

そして報道によれば、後日行われた上記ホテルの社長辞任の記者会見の際にも、社長は「お客様の立場から見れば偽装と受け止められても致し方ない」としつつも、「客を欺く意図をもって不当な利益を得ようとする考えはなかった」と説明。偽装を認めるのかという記者の質問に対しても「上司の指示といった組織ぐるみだという事実は出てこなかった」等と回答し、会社として偽装する認識はなかったかのような回答をしています。

ではなぜこのホテルは「偽装」を認める回答をしなかったのでしょうか。

この点については、すでに一部報道でも取り上げられていますが、私なりに適用法令の観点から考察していきたいと思います。

今回の問題で適用が考えられる法令は主に2つです。

景品表示法(正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」)と不正競争防止法です(このほかに、刑法の詐欺罪や民法の詐欺規定の適用も考えられますが、省略します)。

具体的に、景品表示法の場合、例えば外国産の牛肉であるにも関わらず、国産牛と偽った表示をして牛肉を販売した場合、「一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると誤認させる表示」(優良誤認表示)をしたものとして、景品表示法が禁止する不当表示にあたる可能性があります。

また、この牛肉の例のように、原産地を偽った表示をして商品を販売した場合、その商品の原産地について誤認させるような表示をしたものとして、不正競争防止法で定める「不正競争」に該当する可能性もあります。

このように今回のような表示には、上記2つの法令の適用が考えられるのですが、大きな違いは、それぞれの法令に違反したとされる場合の罰則です。

まず景品表示法違反と認定された場合、当該不当表示を行った企業に対し、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる「措置命令」が消費者庁よりなされます。

この措置命令を受けた場合、企業としては、不当表示の排除や再発防止策の実施等を行い、その対応状況を消費者庁に報告すれば、一応対応は完了することになります(なお、この法律にも刑罰を科す内容の規定はありますが、それは上記措置命令その他行政からの指示に従わない場合に限られ、措置命令に従っている限り刑罰を科せられることはありません)。

他方、不正競争防止法違反になった場合、仮に原産地を偽ったことについて、それが「虚偽」であることを認識していた場合や、消費者を誤認させ不当な利益を得ようとする目的(不正の目的)をもって原産地の虚偽表示が行われたと認定された場合には、刑事罰が適用され、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金(最悪の場合、その両方)が科される可能性があります。

このように見てくると、今回の某ホテルの社長が当初「誤表示」だと説明し、その後、「お客様からは偽装と受け止められても致し方ない」とまで言いつつも、会社として「偽装」を認めなかったのは、この2つの法令の罰則の違いを意識したのではないかと私は考えます。

仮に「会社として偽装の認識があった」と認めてしまった場合、最悪の場合、不正競争防止法違反として刑事罰の対象になってしまいかねず、景品表示法のような行政への報告だけでは事態は収拾できないからです。

ただ、今回の某ホテルによる料理メニューの表示について、景品表示法の「優良誤認表示」にあたるのか、不正競争防止法に定める「商品の原産地や品質等を誤認させるような表示」にあたるのかは、依然不透明な状態です。

上記で述べたような会見での発言の真意はともかく、今回の某ホテルによる一連の対応は、コンプライアンスに携わる私にとっても、教訓になる出来事でした。

コンプライアンスを専門にするある弁護士は、このホテルが、報道機関への資料のタイトルを「メニュー表示と異なる食材を使用していたこと」としていたこと自体を問題にし、このようなタイトルにしたことで、メニューと違う「食材を使用した」ことにフォーカスがあたることになり、結果的に「料理偽装」のようなイメージを報道機関に与えてしまったのではないかと分析しています。

またこの弁護士は、会社として食材の提供に問題はなく、実際に提供していた食材と「メニューの表示が異なっていたこと」を問題にするのであれば、「実際の食材と異なったメニュー表示」を資料のタイトルにすべきであったとも述べられています。たしかにこのタイトルであれば、受ける印象は少しは変わったのではないかという気がします。

今回の問題はまだまだ落ち着きそうにもありません。どのように事態が推移していくのか、関係者がどのような動きをしていくのか、注視していきたいと思います。

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