社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

「セイロガン糖衣A」裁判 大阪高裁判決 その2

2013年10月21日

今回も前回に引き続き、先月出された「セイロガン糖衣A」裁判の大阪高裁判決について、語っていきます。

前回のブログでは、本事件の争点が、

①「セイロガン糖衣A」は、当社商品の商品表示として周知著名であるか
②相手方商品の商品名は「正露丸糖衣S」であり、その称呼(読み方)は「セイロガントーイエス」であるか
③「セイロガン糖衣A」と「正露丸糖衣S」は類似しているといえるか

の3点であり、大阪高裁が、「セイロガン糖衣A」は当社商品の商品表示として周知著名であること(争点①)、相手方商品の商品名が「正露丸糖衣S」であり、その称呼は「セイロガントーイエス」であること(争点②)について、当社の主張を受け入れ、いずれも肯定したことまでを述べました。

それではなぜ、結果的に大阪高裁は当社の請求を退けたのか、以下述べていきます。

大阪高裁は、争点③(「セイロガン糖衣A」と「正露丸糖衣S」は類似しているといえるか)について、まず以下の判断基準を示します。

「取引の実情の下において、取引者、需要者が、両者の外観、称呼、又は観念に基づく印象、記憶、連想等から、両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断する」

つまり、「セイロガンA」と「正露丸糖衣S」の「外観」「称呼」「観念」の全体的な比較により、取引事業者ないしは消費者の観点から、両者の類似性を判断するということです。

そしてまず「称呼」について、「セイロガン糖衣A」は「セイロガントーイエー」の、「正露丸糖衣S」は「セイロガントーイエス」の称呼が生じ、10文字からなる称呼の最後の1文字が違うだけであると述べました。

次に「観念」についても、「セイロガン糖衣A」、「正露丸糖衣S」のいずれからも「糖衣錠タイプの家庭用胃腸薬である」との観念が生じるとしました。

つまり大阪高裁は、両者について、その称呼、観念いずれも類似していると判断したのです。

しかし、以下の画像にある両者の外観については、「類似していないことは明らか」としました。

セイロガン糖衣Aと正露丸糖衣S.jpg

その上で大阪高裁は、「セイロガン糖衣A」と「正露丸糖衣S」の実質的な違いは「A」と「S」の部分だけであるところ、アルファベットの「A」と「S」は発音上紛らわしいものではなく、聞き違えによる誤認の可能性はそれほど大きくない。パッケージについてもカタカナ(「セイロガン」)と漢字(「正露丸」)の違いのほか、全体にデザインが明らかに異なり、特に「A」と「S」のデザイン上の差は大きいとして、両者は類似していないと判断しました。

また、当社が主張していたパッケージデザインの類似性についても、上記当社商品パッケージ中の「セイロガン糖衣A」(金色の大きな「A」という文字部分を含む)の部分と、相手方商品パッケージ中の「正露丸糖衣S」の部分との具体的な差異を凌駕するものではないとして、パッケージデザインの類似性も否定しました。

以上の理由から、大阪高裁は、当社の請求を退けたのです。

この判決内容を聞いて皆さんはどう思われましたか。

大阪高裁は、「セイロガン糖衣A」と「正露丸糖衣S」について、「外観上類似していない」と認定し、「アルファベットの「A」と「S」は発音上紛らわしいものではなく、聞き違えによる誤認の可能性はそれほど大きくない」と認定しましたが、本当にそういえるのでしょうか。

今回の判決を見ても分かるとおり、不正競争防止法上の「類似性」は、判断基準があるとはいえ、結局は裁判官の主観によって決まってしまいます。

「セイロガン糖衣A」が周知著名性であること、相手方商品の商品名が「正露丸糖衣S」(セイロガントーイエス)であり、なおかつ「セイロガン糖衣A」と「正露丸糖衣S」は、その称呼及び観念が類似していることまで認定されながら、結局は、当社の請求が認められなかったのは大変残念ですし、非常に悔しいです。

しかも請求が認められなかった理由が、上記のようにほぼ裁判官の主観に基づく判断であることに、なおさら悔しさを覚えます!

前回のブログでもお知らせしたとおり、当社は今回の大阪高裁判決を不服として、最高裁に上告受理の申し立てを行いました。

最高裁で、事件として取り上げてもらえるのは、原審の大阪高裁判決が「最高裁等の判決に反しているか」ないしは同判決に「法令の解釈に関する重要な事項」が含まれている場合でなければなりません。

つまり、単に「セイロガン糖衣A」と「正露丸糖衣S」は類似している、と主張するだけで足りない独自の要件があり、これは相当高いハードルです。

しかしながら、このように難しい案件であるからこそ、弁護士としての力量が問われるのであり、この案件は裁判で勝つことでしか、解決の道はないと思います。

やはり弁護士は、社内であれ、社外であれ、裁判で勝ってこそ価値があるのであり、この裁判を勝つことでしか、当社、そして「セイロガン糖衣A」ブランドを守る道はないからです。

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