社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

中間判決とは

2013年9月 2日

今回は、「中間判決」について語っていきます。

皆さん、「中間判決」という言葉をお聞きになられたことはありますでしょうか。

最近では、今年の6月下旬、スマートフォンの特許技術をめぐる「アップル対サムスン」間の裁判で、サムスンがアップルの特許を侵害しているとした中間判決を東京地裁が出したことで話題になりました。

また、もう少し前では、「切り餅」の特許をめぐる「越後製菓対佐藤食品工業」との裁判で、知財高裁が、1審の東京地裁の判断を覆し、佐藤食品工業が越後製菓の特許を侵害しているとの中間判決を出しました(1審では、佐藤食品工業による越後製菓保有の特許侵害はないと認定していました)。

このように比較的注目されている裁判で「中間判決」が出されたため、言葉だけなら聞いたことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。

それでは、皆さんがイメージされる「判決」とこの「中間判決」とは何が違うのでしょうか。

また、「中間判決」はいかなる場合に出されるものなのでしょうか。

まず、一般に裁判の最後に出される「判決」ですが、これは法律上は「終局判決」といわれるもので、その事件を、その審級(地裁、高裁、最高裁)につき完結させる判決です。

これは皆さんがよくイメージされる「判決」のことです。

では「中間判決」とは何なのかといえば、その事件の訴訟関係の一部についてのみ出される判決で、当事者間で争いになった事項について、あらかじめ裁判所の判断を与えて訴訟関係を明確にし、最後に出される終局判決を容易にするために行われます。

そして「終局判決」と「中間判決」の違いですが、大きな違いは、前者はこの判決に対し、控訴や上告等の異議申立てができるのに対し、後者はこの判決自体に異議申立てはできず、終局判決を待ってでしか異議申立てができないとされている点です。

また「終局判決」との違いとして、この中間判決はどのような場合でも出せるものではなく、いくつかの要件、つまり制約があります。

合計で3つあるのですが、2つほど紹介しますと、1つは「訴訟手続上の先決事項」といわれるものです。

民事訴訟においては、たとえば特許侵害があるかないかという中身の判断に入る前に、この原告は、本当にこの事件に利害関係を持っていて、原告として適格なのか、また、この原告ないしは被告に対して判決を出すことの利益・必要性があるのか、という訴訟をするための要件、つまり「訴訟要件」が要求されます。

前者の例としては、たとえば特許侵害訴訟を考えた場合に、原告となるのは、当然、権利を持つ特許権者ですが、では、被告と競合関係に立つ同業他社は原告としてこの訴訟に参加できるのでしょうか。

答えは「否」です。特許侵害訴訟で、被害を被っており、この裁判で守られるべきは原告である特許権者であり、同業他社は、たしかにこの訴訟で被告が敗訴すればライバル会社が減って幾分かの利益を得るかもしれませんが、このような間接的な利益では、この訴訟の原告となる適格つまり「原告適格」はないとされるのです。

そして後者は、「訴えの利益」の問題です。具体例は、以前のブログにおいて、成年被後見人の選挙権を求める裁判で、訴訟の途中で法改正がなされ、成年被後見人にも選挙権が与えられたため、判決により選挙権を認める必要性がないとして「訴えの利益」はないとされてしまうのではないか、というお話をしたかと思います(実際は原告と国との間で和解が成立したため、このような結論にはなりませんでしたが)。

以上のような「原告適格」や「訴えの利益」は「訴訟要件」と呼ばれますが、もし裁判でこの「訴訟要件」の存否が争いになった場合、この点が明確にならずに中身の判断(特許を侵害しているかどうか)をしても余り意味がありませんから、この場合には裁判所は「訴訟要件」の存否に係る中間判決を出せるということになります。

そしてもう1つが「原因判決」といわれるもので、当事者間で「請求の原因」と「数額」の双方につき争いがある場合、裁判所は「数額」の問題を切り離して、まず「請求の原因」につき中間判決ができるというものです。

冒頭に紹介した事件で出された裁判は、いずれもこの「原因判決」といわれるものに属すると思われます。

では、以上紹介した要件を満たす場合、裁判所は「中間判決」を出さなければならないのでしょうか。

答えは「否」で、我が国の民事訴訟法は、中間判決を出すか出さないかは裁判所の裁量に委ねています。

ですから、中間判決を出せる場合でも、これをしないで、終局判決1本でいくこともできるのです。

ただ、冒頭紹介した特許侵害訴訟や今当社で進めている「セイロガン糖衣A」裁判のようないわゆる「知財訴訟」において、侵害の有無が激しく争われている場合や下級審での判断を覆すような場合には、中間判決が出される傾向が強いようです(特に注目度の高い事件ではその傾向がさらに強いようにも思われます)。

次に「中間判決」が出されるのはどのような事件なのでしょうか。

「中間判決」の視点で民事裁判を追いかけてみると案外面白いかもしれませんよ。

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