社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

刑法上の因果関係とは?

2013年8月12日

今回は、実際にあった自動車事故の事例を通じ、刑法上の因果関係について語っていきます。

報道によれば、本年4月頃、男性が自転車で通行している際、自動車にはねられるという事故が発生しました。事故当時その男性に目立った外傷はなかったものの、かけつけた警察官や救急隊員がその男性に再三病院に行って診察してもらうよう言いましたが、その男性はそれを断固拒否。結局その事故は「物損」として処理されました。

加害者である運転手も事故当時、被害者男性を自宅まで送り届け、受診するよう念押しをしたそうです。

しかしながら6月上旬、その男性が自宅で死亡していることが分かり、警察がその死因を調べたところ、4月に起きた上記の事故が原因であるとして、自動車の運転手が「自動車運転過失致死罪」で書類送検されました。

警察によれば、被害者の男性は事故により頭を強く打って脳機能障害を起こし、事故後24時間以内に死亡した可能性が高いとみているようです。

また警察は、今回の書類送検について、報道からの取材に対し、「加害者は事故後の対応に手を尽くしたと考えられるが、結果の重大性から摘発せざるを得ないと判断した」とコメントしているそうです。

この事件を聞いて皆さんはどうお感じになられたでしょうか。

自分が自動車を運転していた加害者だったとしたら、この警察の対応をどう思われるでしょう。

加害者からすれば、「事故を起こしたことは悪いことだけれども、病院に行って医者に見てもらえれば助かったかもしれない。自宅まで送り届け、受診するよう念押ししたのだから、加害者としてできることはすべてやり尽くした」と主張したくなるところでしょう。

確かに、警察や救急隊員そして加害者からの説得に応じず、受診を頑なに拒否するというのは通常ではありえない行動です。

しかも受診した場合の治療費は、加害者ないし加害者が加入している保険から支払われるのですから、お金に困って受診を拒否したとも考えにくいです。

では警察の対応が厳しすぎるかといえば、私はそうではないと考えます。

この問題は、要するに、自動車の事故と被害者の死亡との間に刑法上の因果関係があるかどうかに帰着します。

言い換えれば、被害者の死亡は、自動車事故によるものなのか、それとも受診を拒否したという被害者の異常な行動によるものなのかということです。

仮に前者であれば、加害者は被害者死亡の責任を負わなければなりませんが、後者だとすれば加害者に被害者死亡の責任を問うことは難しくなります。

この問題を考えるについて、非常に使いやすい判断基準があるので紹介します。
(前田雅英著「刑法総論講義(第3版)」183頁)

それは以下の判断基準を総合的に考慮して刑法上の因果関係の有無を考えるというものです。

①実行行為に存在する結果発生の確率の大小
②介在事情の異常性の大小
③介在事情の結果への寄与の大小

まず①ですが、警察によれば、本件事故は被害者男性に事故後24時間以内に死に至らしめるような事故だったというのですから、実行行為、つまり被害者男性を車ではねてしまった行為は、被害者の死を招く確率の高い行為であるといえそうです。

次に②ですが、確かに被害者男性が受診を頑なに拒否するというのは通常では考えられない異常なものです。ではその異常性は大きいのか、小さいのかが次に問題となりますが、その点は評価の問題で、次の③についてどのように考えるかによって変わってきますが、私は異常性はさほど大きくないと考えます。

被害者男性が受診を拒否した理由は今となっては分かりませんが、元来病院が嫌いな人もいないわけではなく、本人としてはその当時は本当に大したことはないと考えていた可能性も全くないわけではないからです。

最後に③について、確かに受診していれば、死はまぬがれたのかもしれません。しかしながら、本件事故は、事故後24時間以内に死に至るような重大なものなのですから、被害者の死という結果に寄与しているのは、被害者が受診を拒否したことにあるのではなく、本件事故であると言わざるを得ないと思います。

以上からすれば、上記の基準を用いても、自動車事故と被害者の死との間の刑法上の因果関係は認められると私は考えます。

皆さんはこの点、どうお考えになられるでしょうか。

ともあれ、やはり今回紹介した事故のケースもありますので、自動車事故にはくれぐれも気をつけましょう。

また、仮に事故を起こされた場合には、必ず被害者の方を病院に連れて行くようにしましょう。

お盆で車での行き来が激しい時期となります。

繰り返しになりますが、くれぐれも自動車の運転は気をつけていきましょう!!

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