社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

成年被後見人選挙権訴訟 和解成立

2013年7月30日

今回は、成年被後見人に選挙権を認めるよう求めた訴訟において、和解が成立した件について語っていきます。

以前のブログで、成年被後見人に選挙権を認めない公職選挙法が憲法に違反するとして、成年被後見人である原告が選挙権を求め訴訟を提起し、本年3月、東京地裁は、成年被後見人に選挙権を認めない公職選挙法は憲法に違反することを認め、原告である成年被後見人に選挙権を認める判決を下したことを紹介しました。

この判決を受け、本年5月、国会において公職選挙法が改正され、成年被後見人にも選挙権が認められました。そして、今月行われた参議院議員選挙では、成年被後見人も参加して選挙が実施されました。

ただ、公職選挙法が改正された後も、成年被後見人と国との裁判は続いていましたが、つい先日、成年被後見人と国との間で和解が成立したことが報道されました。

この裁判は、本年3月に1審判決で違憲判決が出、その後、国が控訴していた東京高裁と、札幌、さいたま、京都の3地裁で裁判が続けられていたのですが、これらすべての裁判所で和解が成立しました。

具体的な和解内容は、国が控訴していた東京高裁では、国側が成年被後見人に選挙権があることを認めた上で、控訴審における第1回口頭弁論にて訴訟が終了し、上記の3地裁では、成年被後見人に選挙権があることを国側が認めた上で、原告がその訴えを取り下げるというものです。

ところで、今回の和解が成立した背景の1つに、成年被後見人側の事情として、このまま裁判を続けたとしても、成年被後見人側の「敗訴が濃厚」だったことが挙げられます(このことは報道においても報じられているところです)。

これを聞いて、「えっ」と思われたのではないでしょうか。

1審判決で違憲判決が出ているのだから、控訴審でも成年被後見人側が勝つのではないかと思われたのではないでしょうか。

ここでポイントとなるのが「訴えの利益」という言葉です。
これは、民事訴訟の要件の1つで、「国家機関である裁判所を利用してまで紛争解決をする必要性・利益」のことを意味します。

この「訴えの利益」のない裁判は、裁判所による紛争解決の必要性がないとし、その訴えは不適法なものであるとして、請求が却下されてしまいます(つまり、原告の請求は認められず、敗訴するということです)。

ここで、本件に戻りますと、5月の公職選挙法改正により、今回の訴えの原告である成年被後見人を含め、全ての成年被後見人に選挙権が与えられました。

そうすると、成年被後見人の選挙権は、裁判所による判決によらなくとも、すでに法律改正により与えられていますので、あえて裁判所による紛争解決の必要性はないということになります。

よって、このまま裁判を続けても、「訴えの利益」がないとして、成年被後見人らの請求は却下され、成年被後見人側敗訴ということになってしまう可能性が非常に高いのです。

これが上記で「敗訴濃厚」と述べた意味です。

そして今回の和解は「違憲判決を出した1審判決を確定させたくない」という国側の思惑もあったようです(控訴審で和解が成立すれば、控訴審は1審判決が妥当であったのかどうかを最終的に判断していませんので、1審判決での判断は確定しないということになります)。

上記事情や今回の法改正の是非はともあれ、もともと法改正により紛争は実質的に終了していたのですから、今回の和解成立は望ましいと思います。

ただ、法改正がなされた時点で、このようなアクションはとれなかったのでしょうか。

今回の国側の対応(一旦控訴をした上で和解を提案する)が本当にベストなアクションだったのか、今後のためにも是非振り返っていただきたいと思います。

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