社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

自転車事故に注意!

2013年7月10日

今回は、加害者少年の親に高額な損害賠償額の支払いを命じた自転車事故の事件について語っていきます。

報道によれば、この事件は、小学校5年生の運転していた自転車に60歳代の女性がはねられ、その結果、女性が寝たきりの状態になったとして、この被害者女性の家族とこの女性に保険金を支払った保険会社が、加害者の母親に対して、1億5000万円もの損害賠償を求めたものです。

判決で、裁判所は、小学生の前方不注視が事故の原因と判断した上で、「母親が十分な指導や注意をしたとはいえない」とし、被害者の女性側に3500万円、保険会社に6000万円の合計9500万円の支払いを、加害者の母親に命じました。

自動車事故ならまだしも、自転車事故でこのように高額な損害賠償が命じられるのは珍しいとして、多くのマスコミでこの事件は取り上げられました。

ところで、この事件。損害賠償を命じられたのは、小学生ではなく、その母親です。

なぜ、加害者である小学生は責任を負わず、その親が責任を負うのでしょうか。

「小学生に責任を追及しても、損害賠償額を支払う能力はないから当然ではないか」と考える方もいらっしゃると思いますが、実は民法に規定があるのです。

民法712条は以下の通り規定しています。

「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について損害賠償の責任を負わない」

つまり未成年者の場合、「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」、すなわち「責任能力」を有していない場合には、損害賠償の責任を負わないと規定しているのです。

では、この「責任能力」は何歳くらいから有するものなのかについては、定説はないものの、概ね「12歳くらい」が基準と言われています。

今回の事件の加害者の年齢は定かではないですが、小学校5年生と言われており、そうすると「10歳」ないしは「11歳」と推測されますから、上記の基準からすると「責任能力はない」ということになります。

では、11歳より下の未成年者の不注意により何らかの損害を受けた場合、民法上誰にも責任追及できないのかといえばそうではなく、712条の次の次の条文である714条第1項に次のような規定があります。

「・・・責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」

つまり、責任能力のない未成年者を監督する義務を負う者(親)は、その未成年者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負うと規定しているのです。

ただ例外として、その親が子に対し監督義務を果たしていた、ないしは監督義務を果たしていたとしても損害が発生したことを主張立証できれば、損害賠償義務を負わないとも定めています。

今回の事件については、報道を見ても、原告側の主張の法的根拠は明確ではありませんが、おそらくこの民法714条第1項も、その法的根拠の1つであると思われます。

報道によれば、本事件において、母親は「自転車の走行方法を指導し、監督義務を果たしていた」と主張していたようですが、これもおそらく上記で紹介した民法714条第1項但し書きに基づく主張であると思われます(結局、裁判所はその主張を退け、母親の責任を認めました)。

このように民法では、未成年者である子を持つ親の民事責任をしっかり規定しており、「子供がしたことだから」では済まされない場合があるのです。

また昨今、自転車事故に対する世間の目も厳しくなっており、今回のように自転車事故による損害賠償額の高額化も十分予想されます。

一方で、スマホの操作をしながら自転車を運転する、信号無視をする等マナーの悪い自転車運転者も増加しているように思います。

皆さんの中には、自動車を運転する機会はなくとも、自転車を運転する機会は多いと思います。

今回紹介したようなことにならないよう、自分自身もルールを守って自転車を運転するとともに、お子さんを持つ親御さんにあっては、自転車の運転技術だけでなく、自転車事故の怖さやルールをお子さんにしっかり伝え、お子さんが加害者となり、親である自分が損害賠償責任を課せられることのないよう、共々に注意していきたいですね。

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