社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

ハーグ条約関連法成立

2013年6月17日

今回は、「ハーグ条約」とその関連法について語っていきます。

 

皆さん。「ハーグ条約」はご存知でしょうか。

 

「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」のことを意味し、1980年にオランダのハーグ国際私法会議で採択されたことから「ハーグ条約」と名付けられました(1983年発効)。

 

内容としては、この条約に加盟した国の間では、国際結婚した夫婦のうちの一方の親が16歳未満の子を無断で国外に連れ去った場合に、原則として、元の国にその子を連れ戻すことを定めたものです。

 

報道によれば、欧州やアメリカを中心に89カ国が参加しており、いわゆるG8の中では、最近まで日本だけが未加盟の状態でした。

 

ですが、本年5月、日本の国会は政府によるハーグ条約締結を承認しました。

 

また、同条約加盟後の国内手続き等を定めた関連法案も先日の6月12日に参議院で可決成立し、これで日本もハーグ条約加盟国の仲間入りを果たすことになりました。

 

ところで、なぜ日本は最近まで同条約に加盟していなかったのでしょうか。

 

これは1つには、家庭内暴力に苦しむ子を守るために、暴力を振るっていた一方の親に無断でもう一方の親が自国に連れ去った場合でも、この条約に加盟することになれば、その子は暴力を振るっていた親のいる国に連れ戻されるのではないか、という危惧があったからだと言われています。

 

そこで今回成立したハーグ条約の関連法では、仮に一方の親からの申し立てがあった場合でも、「子どもの心身に害悪がある」場合、具体的には、元いた国に連れ戻されるによって子どもがその親から暴力を受ける恐れがある場合には、返還を拒否できる旨の規定が設けられました(この規定は日本独自のものだそうです)。

 

なお、申し出に基づき、子どもの返還を認めるか否かの審理を担当するのは、東京と大阪の両家庭裁判所のみだそうです。

ところで、この条約については、関連法成立後も課題は山積みのようです。

 

1つは執行の問題で、仮に裁判所から、子どもを元の国に連れ戻すよう、命令が出されたにもかかわらず、連れ去った側の親がそれを拒否した場合、どのように連れ戻すのか。裁判所の執行官が一方の親に黙って連れ去るわけにもいかず、かといって拒否する親と執行官が子どもの引っ張り合いをしてはそれこそ子どもの発育に重要な影響を与えかねませんので、これは非常に難しい問題です。

 

また関連法では、子どもが元いた国への帰国を望まない場合には、返還を拒否できるとされていますが、その子どもの本心をいかに引き出すか(その子が日本語を解さない場合には更に言葉の壁)も課題であると言われています(ただ、この点は、日本人同士の夫婦間で親権が争われた場合においても、子どもの本心を引き出すかは問題になりますので、今回の件特有の問題ではないと思います)。

 

更に、先ほど国内関連法で、連れ戻されることで子どもの心身に害悪がある場合には返還を拒否できる旨の規定を設けたと言いましたが、仮にこの規定が頻繁に活用され、返還拒否のケースが多数積み重なってくれば、ハーグ条約を有名無実化するとして、他の加盟国からの批判も予想されると言われています。

 

当然のことですが、無断での子の連れ去り行為は許されることではありません。

 

そう言った意味で、一方の親による無断での子の連れ去りに関する国際的なルールに日本が参加する行為自体は、個人的な意見ですが、方向性としては正しいと思います。

 

ただ、各国において家族観や結婚観等様々な違いがあり、それによる運用上の課題は、上記のとおり、多々あります。

 

しかしながら、実際にやってみなければ、そのルールに乗っかっていかなければ、見えてこないことが多くあることはご承知のとおりです。

 

ハーグ条約、そして国内関連法の適正な執行は、外務省や裁判所の方を初め、その他多くの方の知恵と努力を要する難事業ではあると思いますが、国際離婚件数が増加傾向にある中(2011年で約1万7,000件)、今回の条約加盟により救われる方は必ずいると思いますので、適正な執行、運用のため、是非頑張っていただきたいと思います。

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