社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

元裁判員 国を提訴

2013年5月13日

今回は、元裁判員の方が、裁判員裁判により急性ストレス障害(ASD)になったとして、国に対し提訴した事件について語っていきます。

事件の概要ですが、報道によれば、この元裁判員の方は、本年3月の強盗殺人事件の裁判員裁判を担当され、この事件の被告人は死刑を言い渡されました。

この事件において、この方は、被害者2人の遺体の刺し傷計24カ所すべてのカラー写真などを見せられ、その後もそれが頭から離れず、不眠症や吐き気、フラッシュバックなどに苦しむようになったそうです。

そして、この方は病院で急性ストレス障害(ASD)と診断されたことから、裁判員になったことによりASDになったとして、裁判員制度を実施した国に損害賠償を求め、本訴の提起に踏み切ったようです。

報道によれば、この方は、裁判員になったことによりASDを発症したことだけでなく、そもそも裁判員制度自体が、苦役からの自由を保障した憲法18条、個人の尊厳を定める同法13条、そして職業選択の自由を規定する同法22条1項に反するとも主張しているそうです。

さらに、裁判員制度を定めた法案を、法案提出から3か月弱の審理で成立させた衆参両議院にも過失があると主張しているそうです。

なお、報道機関の取材に対し、元裁判員の方は、「新たな苦痛を伴う提訴にためらったが、制度が国民のためになっていないと思い決断した」と語ったそうです。

この報道を耳にし、まず私は、このことを大変残念に思いました。

私自身も司法修習生として裁判所や検察庁に修習していた際、刑事事件の被害者の写真を目にすることがありました。

凶悪な殺人事件での被害者の写真は勿論ですが、交通事故の写真や放火や失火の写真も悲惨なもので、見るに耐えないものが多くあります。

他方、被告人の量刑(被告人に対しどのような刑罰を課すのか)を判断する際、殺人罪であれば、被害者がどのように殺害されたのか、つまりその犯行態様は、重要な判断材料です。よって、殺人事件や強盗殺人においては、被害者の写真を見ることは、避け難いものです。

しかしながら、私のように、もともとこのようなこと(刑事事件の被害者の写真を見る)もあるとわかって、この職業に就こうと決意したものと、このようなことを望まずに、国民の義務だからといってやむなく裁判員に就任された方とでは、覚悟が全く違うと思います。

2009年5月に裁判員制度が始まって3年となりますが、今回裁判となった問題だけでなく、裁判員裁判には様々な問題があると聞きます。

例えば、審理期間が1週間ならまだしも、1か月近く要した事件もあったようです。

この事件を担当された方は、裁判員裁判の期間中、仕事面や生活面で支障はなかったのでしょうか。

また、これはこの制度の導入時から言われていたことですが、一般の国民に「死刑判決」という重い判断を下させることに対する心理的影響はないのでしょうか。

この点は、死刑判決に加わった方を追跡調査するなどして、その影響をウォッチしておくべきだと思います。

私自身は裁判官をしたことがないので分からないのですが、人の命を奪う「死刑判決」を決断するのは、心理的に相当負担になるはずです。

しかも、被告人が無罪を主張している場合には、その判断は、冤罪の可能性を秘めているものです。

何十年後になって、新証拠が出てきてその判断が誤りであったとわかった場合、その裁判に関わった方はどのように思われるのでしょうか。想像しただけで恐ろしいです。

別の方もおっしゃっていたのですが、今のように、いきなり殺人罪等、死刑判決もあるような重い決断を要する犯罪のみを対象にするのではなく、窃盗罪等死刑判決がなく、凶悪性が比較的低い犯罪からまず始めて、その後徐々に重い犯罪の判断にも加わっていくというでもよかったのではないかと個人的には思います。

今回紹介した裁判の行方も気になるところですが、それよりも、今回のような訴えを受けて、国が、裁判員を今後どのようにケアしていくのか、上記のような様々な問題がある中で、本当に現行制度のまま運用し続けるのか、真剣に検討していただきたいと思います。

[カテゴリー:]

< 憲法改正 記事一覧 最高裁のある調査 >

y[Wgbv