社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

著作権の戦時加算とは

2013年3月 4日

今回は、「著作権の戦時加算」について語っていきます。

先日、ある新聞に、日本音楽著作権協会(JASRAC)が外務大臣に対し、「著作権の戦時加算」を解消するよう、要望したことが報道されました。

ところで、そもそも「著作権の戦時加算」とはどういうことなのでしょうか。

著作権法によれば、個人が創作した著作物に発生する著作権の存続期間は、「その人の死後50年」とされています。

しかしながら、アメリカ、イギリス、フランス、カナダ、オーストラリア、ブラジル、オランダ、ノルウェー、ベルギー、南アフリカ、ギリシャ等の国については、終戦後日本が締結したサンフランシスコ平和条約に基づき、上記の存続期間に加えて、約10年保護期間が加算されているのです。

具体的には、アメリカ国民が創作した著作物(音楽等)は、日本においては、その人の死後約60年間保護され、その著作物を使用したい場合には、その著作権を管理している者等に対し、使用料を支払わなければならないのです。

外務大臣に戦時加算解消を要望したJASRAC会長の話によれば、この戦時加算により、未だに存続期間内にある音楽やジャズは3000曲にのぼるとのことです。

また、戦時加算に基づき海外の音楽家に支払うため、JASRACが徴収した著作権料は、なんと「1億6000万円」までのぼっているそうです。

では、同じく敗戦国であったドイツとイタリアはどうだったかといえば、ドイツは戦時加算が実質的にはなかったに等しく、イタリアについては、イタリアのみだけでなく、相手方である連合国側も双方加算義務を負うという内容であり、かつEU統合をきっかけとして現在では戦時加算は解消されているそうです。

そうすると、敗戦国の中では、日本だけが一方的な戦時加算義務を課せられているという状況です。

ところで、なぜこのような「著作権の戦時加算」がなされているのでしょうか。「戦時加算」がなされる理由を考えてみたいと思います。

そもそも、著作権の保護期間に関する戦時加算とは、戦時に相当する期間を、通常の著作権の保護期間に加算することで、「戦争により失われた著作権者の利益を回復しようとする制度」のことで、第一次世界大戦後にフランス、ベルギー、ハンガリーなどの国々が国内法で独自に設けたのが始まりと言われています(JASRACのホームページより)。

これだけを見ると、敗戦国の日本だけ一方的に課せられる義務ではないような気がします(現にイタリアでは、同国と連合国側の双方が加算義務を負っていました)。

しかしながら、日本だけ一方的に加算義務を負うことの理由を調べてみると、「戦争期間中、日本が連合国民の著作権を保護しなかった」というのが、その理由のようです。

これに対しては、「連合国側も、戦争期間中、日本国民の著作権を保護しなかったのではないか」との反論が可能ですし、上記の理由だけで日本のみが一方的に加算義務を負わされるというのは全くロジカルではないと思います。

ともかくアメリカからの占領状態をいち早く脱したかった当時の日本としては、不利な内容の条約だったとしても、ともかく呑むしかないという政治判断もあったのかもしれません。

ちなみにイタリアでは戦時加算の一方的な義務付けはなかったものの、領土を割譲され、戦勝国に賠償金を支払っていますし、ドイツにしても平和条約さえ締結できずに、国が2つに分断されてしまいました。そこからすれば、日本が締結した平和条約は、寛大な内容であり、戦時加算の問題のみを取り出して不平等だと主張するのは無理があるという議論もあります。

しかし、戦後67年を過ぎ、ドイツも統合された今、このような制度を残しておく理由は全くありませんし、このような不平等状態は一刻も早く解消すべきだと思います。

相手国からすれば、自国にとって有利であるこの制度を解消したがらないかもしれませんが、日本における音楽、芸術を含めた著作物の一層の発展のためにも、日本政府には粘り強く交渉をしてもらいたいと思います。

それにしても、まだまだ日本には、過去から積み残しになっている問題や課題が未だにあることを、このことを通じて実感します。

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