社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

違法とされた省令の効力

2013年1月28日

今回は、医薬品ネット販売規制最高裁判決において、薬事法に反し無効とされた厚生労働省令の効力について語っていきます。

1月11日、このブログで何度も取り上げていました、医薬品ネット販売規制に対する最高裁判決が出されました。

この判決では、医薬品のネット販売を規制する厚生労働省令(薬事法施行規則)は、薬事法の趣旨に適合せず、同法による委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるとして、医薬品をネット販売している会社に対し、同品をネット販売する権利があることを確認した高裁判決を支持する判断を下しました。

ではこの判決により、厚生労働省令の医薬品ネット販売を規制した条文は削除され、今回の裁判に加わっていない他のネット販売会社も、当然にネット販売ができるようになったのでしょうか。

普通に考えれば、最高裁が「違法であり無効」と判断しているのですから、当然該当条文は削除されたと考えられますし、そうすると他の会社もネット販売ができるように思えます。

しかしながら、正解は「否」で、当然条文が削除されることはありませんし、他の会社が当然にネット販売できるようになるということにはなりません。

(今回の裁判の原告会社は、医薬品のネット販売をする権利が裁判所により認められたのですから、今回の判決によりネット販売することができます。)

現に医薬品ネット販売を規制している薬事法施行規則を見てみると、現時点でも該当条文が削除された様子はありません。

なぜこのような取り扱いになっているのでしょうか。

この鍵は、皆さんが中学校の時に勉強されたと思われる「三権分立」にあります。

これは「立法権は国会、行政権は内閣、司法権は裁判所に帰属し、それぞれの抑制と均衡により各機関がその権限を乱用しないようにしようという考え方」でしたね。

つまり最高裁を含めた裁判所は、あくまで司法権つまり法的な紛争を解決する権限しかもっておらず、持ち込まれた紛争を解決する限度で法を解釈するのみで、国会が制定した法律や内閣が制定した政令を当然に無効にする権限は持っていないというということです。

言い換えれば、制定した法律や政令を廃止するのは、あくまでそれを制定した国会や内閣であり、裁判所をそのような権限を持っていないということなのです。

そういった考え方から、今回問題となった厚生労働省令も、最高裁判決が出た後でも、当該条文が当然削除されることにはならず、当該省令の廃止手続きを踏まなければ廃止されないのです(逆に厚生労働省がこの条文はやはり残そうという判断になり、廃止手続きが取られなければ、医薬品のネット販売を規制した条文は残ったままになります)。

また、一般に判決の効力は、あくまで裁判の当事者であるネット販売会社と国との間にしか生じませんので、裁判の対象ではないネット販売会社にはこの裁判の効力は及ばないのです。

上記の結果を聞いて驚かれた方も多いのではないでしょうか。またそんな制度だったら裁判をすることにあまり意味はないのではないかと思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかしながら、過去、最高裁判決で、憲法に違反し無効とされた法律のその後を見てみると、判決後しばらくして国会で廃止手続きがとられて廃止されたり、法律が廃止されるまで行政もその法律の運用を停止したりと最高裁判決を尊重する措置がとられていますので、今回も早晩、廃止の手続きが取られるのではないでしょうか。

今回の判決を紹介した新聞記事で「医薬品ネット販売解禁」との見出しが出たものもあったと思いますが、これは今回の判決を受け、厚生労働省が早晩この省令を廃止することを見込んでの見出しであったと思われます。

とはいうものの、仮に今回無効と判断された厚生労働省令の条文が残ったままだったとして、今回の裁判の対象でなかったネット販売会社がネット販売するにはどうしたらよいのでしょうか。

この場合は今回の裁判と同様、医薬品のネット販売をする権利が自己の会社にあることを確認する判決を求めて裁判所に提訴するしか手段はないと思います。

医薬品のネット販売を規制することについては賛否両論があり、今回の最高裁判決も、医薬品のネット販売規制について賛否を表明したわけではないですが、とりあえずは今回の判決で、違法であり無効とされた省令の廃止手続きをとった上で、医薬品のネット販売をどのようにしていくのかについて、ゼロベースで検討していただきたいと思います。。

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