社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

最高裁判所裁判官国民審査

2012年12月17日

今回は、先日、衆議院議員総選挙とともに実施されました「最高裁判所裁判官国民審査」について語っていきます。

皆さん。先日の衆議院議員総選挙は行かれましたでしょうか?

行かれた方は、その投票の際、「最高裁判所裁判官国民審査」にも投票されたかと思います。

しかし実際は、各裁判官の名前の下の欄には何も記入をされず、投票箱に投票をされた方が多いのではないでしょうか。

そもそも「最高裁判所裁判官国民審査」って何だ、どうして衆議院議員の総選挙と同時に行われるのか、なぜ「×」のみを記入し、「○」は記入してはいけないのかと様々な疑問が思い浮かんだのではないでしょうか。

既に投票が終わってしまった後で、遅ればせながらではありますが、今回はこれらの疑問に答えていきたいと思います。

まず、この「最高裁判所裁判官国民審査」ですが、現行の日本国憲法において初めて採用された制度で、憲法の教科書によれば、米国のミズーリ州等若干の州で行われていた制度にならって採用され、国会で制定した法律を憲法違反を理由に無効にできる最高裁判所の地位とその権限の重要性、重大性に鑑み、「最高裁判所裁判官の選任に対して国民によるコントロールを及ぼす」ことを目的に採用された制度です。

(ちなみにこの国民審査は「最高裁判所」の裁判官に対してだけで、地方裁判所や高等裁判所の裁判官に対しては、このような制度はありません)

そして、憲法79条第2項では、以下の通り規定しています。

「最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。」

今回実施された国民審査の対象裁判官は、15名いる中の10名の裁判官です。

これらの裁判官は、2009年の前回衆議院議員総選挙後に任命され、今回がその任命後初めて行われる衆議院議員総選挙であったことから、上記憲法79条2項に基づき国民審査に付されたわけです(今回仮に罷免されなければ、これらの裁判官は、10年経過後の衆議院議員総選挙の際、再び国民審査に付されることになります)。

それでは国民審査の際、なぜ罷免する場合のみ「×」を記入し、罷免しない場合に「○」を記入してはいけないのでしょうか。

先ほど紹介した憲法79条。その第3項は以下の通り規定しています。

「前項(79条2項のことです)の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。」

つまり国民審査の結果、罷免を可とする投票者が、罷免を可としない投票者よりも多かった場合、その裁判官は罷免されると定めているのです。

この規定、そして先ほど説明した国民審査制度の趣旨(最高裁判所裁判官の選任に対し国民によるコントロールを及ぼす)を根拠に、「最高裁判所裁判官国民審査」という制度は、一種のリコール制度(分かりやすく言えば、国民の投票により最高裁判所裁判官をクビにする制度)を定めたものであるという理解で判例、学説とも一致しています。

そのことから、投票の際には、罷免の意思を示す「×」のみで十分とされ、「○」その他「×」以外の記号の記入は無効とされているのです。

これを聞いて、「理屈はそうかもしれないけど・・」と思われる方も多いのではないでしょうか。

私自身も何も記入しないで投票箱に投票するというのは、投票権を放棄しているみたいで、かなり違和感を覚えます。

またそもそもこの制度自体、訴訟大国である米国の制度に習ったものであり、日本に本当にマッチしているのか疑問ですし、またマスコミもこの制度や各裁判官の実績等についてあまり報道しないので、国民の関心はほとんどないというのが現状だろうと思います。

しかしながら、この制度は憲法に定められている以上、廃止するには憲法改正が必要で、憲法改正には非常に高いハードル(衆参両議院の3分の2以上の賛成+国民投票で過半数の賛成)がありますから、この制度が廃止されることは当面はないと思います。

そうすると何とかこの制度を活かす方向で検討すべきだと思いますが、まずできることとして、少なくとも投票の際、「○」を記入しても有効という扱いにしてもよいのではないかと思います。

(「○を記入した場合は無効」と定めているのは、憲法ではなく、法律(最高裁判所裁判官国民審査法)ですので、法律改正すればこれは可能です。)

また、普段から、もう少し最高裁判所の仕事内容や最高裁判所が出す判決の意味と重要性についての広報やPRを、法律家(裁判官、検察官、弁護士)やマスコミがもっとやるべきだとも思っています。

次の国民審査の際には、この制度が少しでも改善されていることを祈りつつ、筆をおきたいと思います。

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