社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

カラオケ法理

2012年12月10日

今回は、「カラオケ法理」について語っていきます。

「カラオケ法理」、皆さんはご存知でしょうか。

言葉だけを見れば、「カラオケに関する何らかの法律理論」と想像するかと思います。

しかしながら結論から言えば、「カラオケ装置を設置し、客にカラオケ伴奏による歌唱をさせたスナックの経営者が、著作権侵害の主体である」と認定した最高裁判決からこの名前が付けられました。

これだけ述べても「??」と思いますので、順を追って説明しますと、まず著作権者は、演奏権つまり、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として、上演し、又は演奏する権利を独占的に保有しており、著作権者以外の者は、著作権者の許可なくこれを行うことはできません。

そして、スナックで客が歌唱することは、他の客の前で歌唱することもある以上、「公衆に直接聞かせること」に該当しますし、また歌唱は「演奏」に含まれると考えられています。

そうすると、スナックでカラオケ伴奏のもと歌唱する客の行為は、「公衆に直接聴かせることを目的として、演奏すること」に該当します。

えっ!!ではこれまでスナックで歌唱していたことは著作権侵害となるのか?とお思いになる方もいるかと思いますが、ご安心ください。

著作権法38条に、「営利を目的とせず」、かつ「聴衆から料金を取らない場合」には、公に演奏(歌唱)できるとされていますので、客である皆さんがスナック等で歌唱をしても著作権法に触れることはありません。

ではスナック等の経営者はどうでしょうか。

まずスナックの経営者や従業員が歌唱することについては、カラオケ伴奏による歌唱も接客という営業活動の一環であり、これに対する料金を徴収していると言える以上、「営利を目的」とし、「聴衆から料金を取っている」といえますので、上記38条は適用されず、著作権者が有する演奏権の侵害行為にあたります。

それでは、スナック等の客が単独で歌唱することについても、スナック等の経営者は著作権侵害の主体となるのでしょうか。

これが「カラオケ法理」といわれる法理を提示したとされる最高裁判決が出された事件の争点です。

この点、普通に考えれば、客が単独で歌唱する場合、歌唱しているのは、「客」であり、スナック側は歌唱していないのですから、著作権の侵害主体となるのは、「客」のみと考えられそうです(但し、先ほど説明したとおり、著作権法38条により「客」の歌唱は著作権侵害にはなりません)。

しかしながら、カラオケ装置を備えおいているのはスナック側ですし、カラオケ伴奏による歌唱を客に行わせることによって店の雰囲気を良くし、そのようなカラオケ伴奏による単独歌唱の機会を提供するというサービスによって更なる客の来場を図って利益を得ていると言えますので、客単独の歌唱に対しスナック側が全く責任を負わないというのは不都合と言えます。

また、仮にスナックの経営者や従業員の歌唱については著作権侵害だが、客単独の歌唱については著作権侵害とはならないとした場合、著作権者としては、どの歌唱が経営者や従業員による歌唱で、どの歌唱が客単独による歌唱かを区別し、それを裁判所に立証することになりますが、そのようなことは不可能に近いと考えられますので、上記結論では著作権者がその保護を受けることは実質的に不可能です。

上記のような不都合を考慮してか、最高裁判所は、スナック等において、客単独でカラオケ伴奏により歌唱させる場合も、演奏(歌唱)という形態による著作権の利用主体はスナックの経営者にあるとし、同経営者が著作権の侵害主体であるとしました。

このように『実際の侵害主体ではない者を侵害主体であるとみなした』点に本判決の特徴があり、その特徴ゆえに「カラオケ理論」という名称が付されたものと思われます。

なお、最高裁判所の判決の場合、多数意見に異議がある裁判官は自分の意見を判決文に記載することができるのですが、本判決には多数意見に異議のある裁判官からの意見が付されており、それによれば「客単独による歌唱を、スナック側による歌唱と同視することは不自然であり、無理な解釈ではないか」と述べられています。

ところで、前回取り上げました「自炊代行業者」による自炊代行ですが、これについても実は今回と同じような問題設定、つまり「書籍を複製する主体は誰なのか」、言い換えれば「著作権者の複製権を侵害している主体は誰なのか」という問題設定が可能です。

つまり、自炊代行は注文者から注文を受けて書籍を電子化し、それを注文者に納品するわけですが、注文者が書籍電子化の主体であり、代行業者はいわばそれを「補助」に過ぎないとも考えることができ、そうすると、代行業者は著作権侵害の主体とならないのではないかとも思われます。

他方で、今回の「カラオケ法理」の考え方を応用すると、代行業者は注文者からの依頼を受け書籍を電子化し、その電子化されたデータを納品することで、報酬を得ている以上、「代行業者」こそが、著作権侵害の主体ではないかとも考えられます。

この点、みなさんならどう考えられるでしょうか。

今回の「カラオケ法理」を使って考えてみると、良い頭の体操になるのではないでしょうか。

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