社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

「自炊」代行

2012年12月 6日

今回は、小説家や漫画家数名が、いわゆる「自炊代行業者」に対し、訴訟を提起した事件について語っていきます。

皆さん、「自炊代行業者」という言葉をご存知でしょうか。

不特定多数の者からの注文を受け、不特定多数の書籍をスキャンして電子化したうえで、それを注文者に納品する事業を行っている業者のことを意味するそうです。

(ちなみに『自炊』の語源ですが、朝日新聞によれば、データを自ら「吸い出す」ことに由来する(「炊」は当て字)との説が有力だ、そうです。)

先日、小説家、漫画家数名が、この自炊代行業者7社を相手取り、著作権法に基づき、自炊代行の差し止めと損害賠償を求めて、東京地方裁判所に提訴したことが報道されました。

原告らである小説家等の主張は、小説等を購入したものが自己使用目的で書籍をスキャニングすることは「私的利用」の範囲内の行為で著作権法上許されるが、小説等を購入したものからの依頼を受け、その書籍をスキャニングし電子化した上で注文者に納品する、いわゆる自炊代行は「私的利用」の範囲を超えており、複製権を独占的に有している著作権者の許可がなければできないはずであるが、自炊代行業者はその許可を得ていない。よって自炊代行業者の行為は著作権者の複製権を侵害するというものです。

ところで原告らが本件訴訟を提起するに至る経緯ですが、昨年9月、原告らは自炊代行業者に対し、著作権者として自炊代行は許可しないとの意思を示すとともに、今後もこの事業を継続する意思があるのか否か確認する質問書を送付しました。

これに対し、事業継続の意思を示した2社に対し、昨年12月、自炊代行の差し止めを求め提訴しました。

結果、そのうち1社はスキャン事業を廃止し、会社としても解散したため、この会社に対しては、訴えを取り下げたことにより終了し、残り1社は原告らの請求を全面的に認め、原告らの請求を認諾(にんだく)したため、原告側の実質勝訴で確定していました。

今回訴えられた7社は、原告らが昨年9月に送付した上記質問書に対し、4社は回答をせず、1社は事業継続の意思を示す回答を、2社は「原告らの作品はスキャンしない」と回答しながら、その後も原告らの作品をスキャニングしていたことから、「被告らによる著作権侵害を防ぐためには、裁判による判決以外にない」と考え、今回の提訴に至ったそうです。

まず大前提として、自分で購入した書籍を自分やその家族が楽しむ目的でコピーすることは「私的利用」の範囲内で著作権法上問題ありません。

同様に、自分やその家族が楽しむために、購入した書籍をスキャニングすることも「私的利用」の範囲で問題ありません。

そうすると、自炊代行業者の行為は、本来本人が行うべきスキャニング行為を代わって行なっているにすぎない、いわば本人のスキャニング作業を「補助」しているに過ぎす、また業者自身がそのスキャニングした電子データを利用するわけではないから、本人のスキャニング行為の延長として、「私的利用」の範囲内の行為ではないかとも考えられます。

しかしながら、私的利用の目的で書籍をコピーする場合、原則として、「利用する本人」自らがコピーをしなければならないとされています。

よって、業者に依頼して書籍をコピーすることは著作権者の許可がない限りできません。

また、このような自炊代行業者の自炊代行が許された場合の弊害として、原告らによれば、この業者により納品された電子データには複製防止処置が施されておらず、容易に第三者に複製できてしまうようです。

そうすると、最悪の場合、その書籍を購入したことがない者でもネット上でその書籍を無料ですべて読むことができてしまい、誰もお金を出してその書籍を買おうとは思わなくなります(プリントアウトすれば書籍を買ったのとほぼ同じ効果が得られます)。

そして現在、成長過程にある電子書籍にも大打撃を与える可能性があります(電子書籍も有料ですから、無料で書籍のPDFをネット上で読めるのであれば、誰も電子書籍を購入しようとは思わなくなってしまいます)。

これらのことを考えると、今回の訴訟を提起した原告らの心情も理解できます(ただ上記の弊害は個人が書籍を電子化した場合でも起こりうるとは思いますが、相当の労力を要すると思います)。

法的には、上記で述べた弊害を考慮するまでもなく、私的利用の複製は本人のみという大原則からすれば、原告らの主張に理があるようにも思えますが、裁判所はどのような判決を下すのでしょうか。

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