社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

東京べったら漬事件

2012年10月29日

今回は、「東京べったら漬」という漬物の類似品に対して提起された裁判を紹介したいと思います。

皆さんは、「東京べったら漬」という漬物をご存知でしょうか。

私は東京出身ではないので知らないのですが、この漬物をめぐって裁判になった事件があります。

概要ですが、「東京べったら漬」、「東京ゆずべったら漬」という表示を用いて漬物を製造販売する原告が、「東京べったら」「東京ゆずべったら」という表示を用いて漬物を製造販売する会社に対し、不正競争防止法に基づき、被告製品の販売差し止めや損害賠償を求めたものです。

原告の主張は多岐にわたりますが、そのひとつを紹介すると、原告の「東京べったら漬」や「東京ゆずべったら漬」の表示、そしてそのパッケージデザインは周知なものであり、これに類似する「東京べったら」や「東京ゆずべったら」の表示や原告製品のパッケージに類似したパッケージデザインを用いて漬物を販売することは、不正競争行為にあたるというものです。

この原告の主張に対し、裁判所はどう判断したのでしょうか。

まず「東京べったら漬」、「東京ゆずべったら漬」という表示やそのパッケージデザインが原告製品を示すものとして、周知な表示であるかどうかについて、裁判所は、「東京べったら漬」や「東京ゆずべったら漬」は、相当以前から原告以外の複数の会社によって同一名でべったら漬けが販売され続けていること等から、原告製品を示す表示ではないと判断しました。

しかしながら、そのパッケージデザインについては、その販売数や販売額の多さ等から原告独自のデザインであることを認め、原告製品を示す表示であることを認めるとともに、その宣伝広告やべったら漬け全体におけるシェアの高さから、そのパッケージデザインは周知のもの(つまり取引先や消費者の間に広く認識されている表示)であることを認めました。

そして原告製品と被告製品との類似性については、「東京べったら漬」については、原告製品のパッケージの一番目立つ色が「緑色」であるのに対し、被告製品のそれは「青色」であることや、右側にある挿絵も異なっている、商品名を示す文字の配置も同じではない、という違いがあるにもかかわらず、結論として裁判所は類似性を認めました。

(原告製品と被告製品のパッケージを確認されたい場合は、以下のアドレスよりご確認ください。被告製品は「イ号包装目録」、原告製品は「原告商品等表示目録1-2」です。http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111128090933-1.pdf)

その理由ですが、被告製品は原告製品とほぼ同じ大きさの透明な包装パックを用いていること、包装の中央部に大きくはっきりと目立つ態様で「東京べったら」と表記されていること、包装の切り口が同じ位置に2箇所、赤色で示されていること等の共通点を挙げた上で、被告製品は原告製品とその構図や色彩の構成に共通点が多く、包装の大きさもほぼ同一であること等から、被告製品は原告製品と類似していると判断しました。

なお「東京ゆずべったら漬」についても、裁判所は、被告製品が原告製品と類似していると判断しました(この点については、原告製品、被告製品ともに、目立つ色は双方「黄色」であることから、「東京べったら漬」について類似性を認めたことからすれば当然の認定であったと思われます。この点も上記アドレスより確認してみてください)。

そして裁判所は、もうひとつの要件である、被告製品が原告製品と誤認混同を生じさせるかについても、これを認め、先述した原告の主張を認めました。

「東京ゆずべったら漬」についての類似性の判断はある程度頷けるものの、「東京べったら漬」については、パッケージの目立つ色が、一方が「緑色」、他方が「青色」と印象が相当異なることから、類似しないという判断もありえたと思います。

ちなみにこの裁判は、「東京べったら漬」や「東京ゆずべったら漬」という文字表示については周知性を認めなかったものの、そのパッケージデザインに周知性を認め、かつ類似性を認めた事案であり、私が「セイロガン糖衣A」裁判を進めるにあたり参考になる事件でもあったため、紹介させていただきました。

皆さんが裁判官であれば、「東京べったら漬」のパッケージデザインの類似性をどう判断されたでしょうか。

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