社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

応用美術とは?

2012年10月16日

今回は、「応用美術」について語っていきます。

皆さん、「応用美術」という言葉をご存知でしょうか。

これは著作権法において問題となる言葉で、ごく簡単にいえば「美術作品を実用品に応用したもの」と考えてもらえばよいと思います。

ところで、絵画、彫刻、版画などの「美術作品」や、美術作品などの技法を実用性のある物品に応用してはいるものの、実用性よりも美の追求に重点が置かれている一品作品(「美術工芸品」といわれています)については著作権が発生すると言われています。

では「美術作品を実用品に応用したもの」のうち、上記の「美術工芸品」ではないものについて、著作権は発生するのでしょうか。

この点については、著作権法上明確な定めはなく、解釈に委ねられていますが、

多数の裁判例によれば、美術工芸品を除き「美術作品を実用品に応用したもの」には著作権は発生しないが、それが「高度の芸術性」を備え、「美的鑑賞の対象」となるなど、純粋な「美術作品」や「美術工芸品」と同視できる場合には、著作権が発生すると判断しています。

なぜこのような判断になったのでしょうか。

これを理解するには、意匠法と著作権法の理解が不可欠です。

意匠法は、意匠、つまり工業上利用される物品の装飾やデザインを保護し、その創作を奨励することにより、産業の発展に寄与すべく制定された法律で、この制定目的からすれば工業上利用される物品、言い換えれば実用品や量産品の装飾やデザインを主に想定しています。

そして、この法律に基づき意匠登録をすれば、その登録から20年、登録した装飾やデザインを独占的に利用することができ、他者がその意匠を使用していた場合、使用中止や損害賠償を請求することができます(なお、この登録した意匠は一般に公開され、誰でも閲覧することができます)。
ただし意匠登録には、時間と費用がかかります。

他方、著作権法は、芸術作品や文学作品等の創作者の権利を保護することにより、文化の発展に寄与することを目的とした法律で、このような法律の目的からすれば、実用品や量産品の装飾やデザインまでも射程においたものではありません。

また、著作権は何らの登録も必要なく、芸術作品等を創作した時点で権利が発生し、その権利の存続期間は、個人であればその死後50年、法人であればその作品公表後50年と相当長い期間保護されます。

以上の各法律の制定目的やその射程を考えれば、実用品や量産品の装飾やデザインは、著作権法ではなく、意匠法によって保護されるべきと考えるのが妥当といえます。

そして仮に実用品や量産品のデザインが著作権法で保護されることになれば、誰も時間や費用をかけてまで意匠登録しないでしょうし、デザインを制作する者からしても、どのようなデザインであれば他人の権利を侵害しないのか全く分からず、誰も実用品や量産品のデザインをしなくなるでしょう。

そうなれば、意匠法の目的である「産業の発展への寄与」は全く果たせなくなります。

このようなことから、純粋な「美術作品」や「美術工芸品」と同視できるような例外を除き、美術作品を実用品に応用した、いわゆる「応用美術」には著作権が発生しないとされているのです。

この点、依然、紹介した烏龍茶事件の判決では、黒烏龍茶のパッケージデザインについて著作権が発生することを理由とした、原告による被告製品の差止め等の請求に対し、著作権法の条文を引用した上で、以下のように述べ、原告の請求を退けています。

「これらの規定は、意匠法等の産業財産権制度との関係から、著作権法により著作物として保護されるのは、純粋な美術の領域に属するものや美術工芸品であって、実用に供され、あるいは、産業上利用されることが予定されている図案やひな型など、いわゆる応用美術の領域に属するものは、鑑賞の対象として絵画、彫刻等の純粋美術と同視し得る場合を除いて、これに含まれないことを示していると解される。」

この裁判例も先ほど私が説明した上記理解を前提にしたものといえると思います。

この「応用美術」。著作権法を勉強している人にとってもまさに「応用問題」のような論点で非常に難しい言葉ですが、著作権法だけでなく、意匠法も勉強でき、なおかつ実務上も、知っていると何かと役に立つことのある言葉だと思います。

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