社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

サクラサク事件

2012年9月10日

今回は、「サクラサク」を用いた商標に対する無効審判請求の審決に係る取消訴訟について紹介したと思います。

無効審判請求の対象となった商標ですが、受験シーズンにチョコレート菓子「キットカット」に用いられていた、右肩上がりに傾いたサクラ様の5弁の花びらの図形の中に「きっと,」と「サクラサクよ。」の句読点を含む文字を二段に配置した構成からなる商標(本件商標)です。


(この商標登録番号は「第5049553号」で、独立行政法人工業所有権情報・研修館が提供する「特許電子図書館」(http://www.inpit.go.jp/ipdl/service/)で閲覧可能ですので、この絵柄を見たい方は同サイトよりご欄ください)。


そして、標準文字で「サクラサク」(引用商標)の商標登録している会社から、上記本件商標が引用商標に類似するとし、本件商標の無効審判を求めて特許庁に請求したところ、特許庁が「この請求は成り立たない」との審決を下したことから、この審決を不服として、知財高裁に審決取消を求めたものです。


知財高裁は、本件商標と引用商標との類似の判断基準として、その外観、観念、呼称等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察し、またそれらの商標が使用されている商品の取引実情も考慮した上で、両者の商標が使用されている商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるかどうかによって決すべきであるとしました。


その上で、称呼(呼び方)については、本件商標からは「キットサクラサクヨ」又は「サクラサク」の称呼が生じ、引用商標からは「サクラサク」の称呼が生じるとして、かなり類似するとしながらも、


両商標の外観は大きく異なり、両商標から生じる観念についても、本件商標からは「きっと桜が咲くよ。」又は「きっと試験に合格するよ。」といった受験生等に対するメッセージ的な観念が生じるのに対し、引用商標からは単に「桜の花が咲く」又は「試験に合格した」という事実についての観念が生じるにすぎず、ある程度異なるとしました。


さらに裁判所はこれらの商標が実際に使用されている商品に着目し、本件商標は、受験シーズンに専らキットカットに用いられ、受験応援商品の意味合いが強いのに対し、引用商標は、受験シーズンに関係なく、袋菓子や焼き菓子などに用いられ、受験応援商品としての意味合いが薄く、誤認混同のおそれは低いと評価し、結論として、本件商標と引用商標との類似性を否定しました。


本事件では、本件商標から生じる観念を「受験生等に対するメッセージ的な観念」、引用商標から生じる観念を「『試験に合格した』という事実についての観念」と評価し、また本件商標が用いられているキットカットを、その時期に着目して「『受験応援商品』の意味合いが強い」と評価するなど、一応の判断基準があるものの、あてはめにおいては裁判官の主観によりかなり結論が左右される印象を持ちました。


皆さんはどう思われましたでしょうか。


このような訴訟を担当する弁護士としては、法解釈ではなく、裁判官に有利に「評価」してもらえるような事実をどれだけ集め、それをいかにうまく裁判官にプレゼンできるかにかかっているのだと改めて思った次第です。

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