社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

黒烏龍茶事件

2012年9月 4日

今回は、ペットボトル飲料「黒烏龍茶」を製造販売する会社が、その類似品を製造・販売した会社に対し訴訟を提起した事件について、語っていきます。

事件の概要ですが、ペットボトル飲料「黒烏龍茶(クロウーロンチャ)」を製造する原告が、煮出し用のティーバック商品である「黒烏龍茶(ブラックウーロンチャ)」(A商品)及び「黒濃烏龍茶(コクノウウーロンチャ)」(B商品)を製造または販売している被告ら(2社)に対し、不正競争防止法等に基づき、各商品の製造等の差し止め、包装の廃棄、損害賠償を求めて提訴したものです。


原告の主張ですが、不正競争防止法に限っていえば、「黒烏龍茶」は周知著名な表示であり、その周知著名な表示と類似する表示を使用した商品(「黒烏龍茶」「黒濃烏龍茶」)を製造販売し、消費者に誤認混同を生じさせているから、被告らの行為は不正競争防止法上禁止される不正競争行為にあたるというものです。


ところで、本件で特徴的なのは、原告はこの「黒烏龍茶」を消費者に周知するために、テレビ、新聞、雑誌のほか、JRの中吊り、屋外看板、インターネット等様々な手段を用いて広告を行っていますが、その周知期間が商品販売後「2か月」程度しか経過していないこと、


原告の商品は「ペットボトル飲料」であるのに対し、被告らの商品は「煮出し用のティーバック商品」であり、「飲料」という括りでは共通するものの商品の種類としては相当異なっているという点です。


これに対し裁判所は、原告の「黒烏龍茶」という表示について、周知期間が短すぎることを理由に「著名性」は認めませんでしたが、「周知性」は認め、また「黒烏龍茶」と表示するA商品との間には原告商品との類似性を認めましたが、「黒濃烏龍茶」と表示するB商品との間には類似性を認めませんでした。


さらにA商品は、消費者に原告商品と同一のもの、ないしは原告の関連商品ないしシリーズ商品であると誤認しうるものであるとして、A商品について、誤認混同のおそれのあることも認めました。


裁判所が原告の主張を認めたポイントとしては、原告商品とA商品とでは、確かに商品の種類は異なるものの、「黒烏龍茶」やその含有成分(ポリフェノール)の文字の字体や色、配置が共通していたこと、双方とも商品名が「黒烏龍茶」で、読み方(称呼)も共通していること等にあると思います(この点、A商品には「ブラックウーロン」という振り仮名が付いていたようですが、裁判所は「黒烏龍茶」とその振り仮名の文字の大きさの比率からすれば、消費者は必ずしもそのように読むとは限らないと判断しました)。


ところで、裁判所は上記の通り、原告の「黒烏龍茶」という表示について「周知性」は認めましたが、「著名性」は認めませんでした。


この「周知性」と「著名性」の意味について、前者の場合には「誤認混同のおそれ」が要求され、後者の場合にはそれが要求されない関係上、「周知性」はその表示が一地域内で知られていれば足りるのに対し、「著名性」はその表示が全国的に知られていることが必要として、その周知の程度に差を設けています。


その上で裁判所は、当該表示の周知期間について、「著名」な表示として「誤認混同のおそれ」の要件を充足しないまま法的保護を受けるためには、「一定の時間の経過」が必要とあり、2か月程度では短すぎるとして、上記の判断にいたったものです。


なおこの判決については、原告、被告双方とも控訴せず、一審で確定したそうです。


この裁判において原告は、不正競争防止法だけでなく、商標法、著作権法などいわゆる「知的財産権法」と呼ばれるものを様々駆使して主張を展開しており、そのため、論点も盛りだくさんの裁判例です。


この判決は最高裁のHPでも掲載されていますので、特に知財を勉強されている方は是非一度読まれることをお勧めします。

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