社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

グリーVSディー・エヌ・エー 釣りゲーム事件

2012年8月20日

今回は先日、知財高裁による判決が出されたグリーとディー・エヌ・エー等間の携帯電話用釣りゲームに係る裁判について語っていきたいと思います。

この事件の概要ですが、ディー・エヌ・エーらが製作し配信している携帯電話用釣りゲーム(以下「ディーエヌエーゲーム」といいます)が、グリーが製作配信している釣りゲーム(以下「グリーゲーム」といいます)に係る著作権等を侵害するとして、グリーがディー・エヌ・エーらに対し、著作権に基づき、ディーエヌエーゲームの配信の差し止めや損害賠償、謝罪広告の掲載等を求め提訴したものです(そのほか、不正競争防止法や民法を根拠に同様の請求をしていますが、割愛します)。


そして第1審では、ディーエヌエーゲームがグリーゲームに係るグリーの著作権等を侵害していることを認め、ディーエヌエーゲームの配信差し止めと損害賠償請求の一部を認めました。


これに対し、ディー・エヌ・エー側が知財高裁に控訴するとともに、全ての請求が認められなかったグリーも控訴しました。


この控訴に対し、知財高裁は、1審と逆に、ディーエヌエーゲームは、グリーゲームに係るグリーの著作権等を侵害していないとして、ディー・エヌ・エー側の主張を認め、グリーの請求を認めた1審判決を取り消す判決をしました。


この判決については、最高裁判所のHPでも紹介されていますので、
(http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82492&hanreiKbn=07)
詳細はそれに譲るとして、ポイントのみを説明したいと思います。


本件で著作権侵害が認められるためには、
①著作権侵害とされるゲーム(ディーエヌエーゲーム)に接する者が、既存の著作物であるゲーム(グリーゲーム)の表現上の本質的な特徴を直接感得することができること、
②既存の著作物の表現部分や表現上の創作性が認められる部分について、著作権侵害とされるゲームが既存の著作物と同一性を有すること(逆に、表現それ自体でない部分(思想、感情、アイデア等)や表現上の創作性がない部分について同一性を有していたとしてもそれは著作権侵害とはなりません)、
が必要となります。


そして知財高裁では、ディーエヌエーゲームのうち著作権侵害とされる画面等は、アイデアなど表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分においてグリーゲームと同一性を有するにすぎず、


また、グリーゲームやディーエヌエーゲームにおける画面や画面構成、画面の変遷(移り変わり)は、釣りゲームにおいて「ありふれた表現方法」にすぎないものであること等を理由として、ディーエヌエーゲームに接する者がグリーゲームの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないとしました。


上記判決の中で、グリーの著作権侵害の主張を認めなかった根拠として、グリーゲームやディーエヌエーゲームの表現方法が「ありふれた表現方法」であることが挙げられています。


この意味は、仮にこのような「ありふれた表現」に対し著作権を認め、他者に対する使用差し止めや損害賠償が認められれば、「ありふれた表現」の著作権を主張する者以外の者の表現の自由(憲法21条)が著しく制限されてしまうため、「ありふれた表現」と認められるものには著作権を認めないという考え方が根底にあります。


そして著作権は、著作者が著作物を創作した時点で発生し、特に外部に公示はされません(この点で、「登録」により外部に公示される「特許権」「商標権」「意匠権」等とは異なります)。


また「特許権」「商標権」「意匠権」等は、登録のために権利者はある程度のコストを負担しますが、著作権については登録が必要ないため、このようなコストはかかりません。


以上のような点から、他の判例を見ると、「著作物」性を否定して著作権主張者の請求を棄却する等、余り広く著作権を認めていないように見受けられます。


今回の知財高裁の判決もこのような価値判断が根底にあったのかもしれません(推測ですが)。


今回の知財高裁の判決を受け、グリーは最高裁に上告したようですが、最高裁がどのような判断を下すか、注目したいところです。

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