社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

入れ墨を理由とする退学勧告は違法?

2012年7月30日

今回は、入れ墨を理由に退学勧告をしたのは違法だとして、元専門学校生が、在籍していた学校法人に対し、入学金や慰謝料などの損害賠償を求めた事件について取り上げたいと思います。

本年6月4日に掲載したブログで、某市の入れ墨問題に関連して、髪型を決める自由が日本国憲法上保障されるかどうかについて、お話したと思います。


その中で、「入れ墨を入れる自由」が自己決定権の一内容として憲法13条で保障されるのかと問題提起をしたと思います。


本件はまさにその問題点について、1つの回答を用意するであろう事件です。


この事件の概要ですが、新聞記事によれば、この元学生は、ある資格を取得するため、被告である学校法人の経営する専門学校に入学したものの、担任から「入れ墨があると資格取得は難しい」と言われ、肩に入れ墨があることを告白しました。


その後、学校側から退学するか、一定の期限までに入れ墨を消すか、どちらか選ぶよういわれ、2度手術は受けたものの、学校側の定めた期限までには消えず、本年3月に除籍となったようです。


原告である元学生の主張は不明ですが、新聞記事によれば、本件のように入れ墨を理由として退学勧告などの不利益な処分を課すことは「人格権」の侵害であると主張しているようです。


ところで、この「人格権」という言葉ですが、「人の生命、身体そして自由を侵されない権利」、「人の社会的評価(名誉)を低下させない権利(名誉権)」がこれに該当することは民法の条文(710条)からも明らかです。


また「私生活をみだりに公開されない権利(プライバシー権)」や「氏名を他人に冒用されない権利(氏名権)」、「人が自己の肖像をみだりに他人に撮影されたり使用されたりしない権利(肖像権)」も、この「人格権」の一内容であると判例・学説上言われています。


それでは「入れ墨を入れる自由ないし権利」も「人格権」の1つといえるのでしょうか。


この点については、民法の条文、判例そして学説上も明らかではありません。


しかしながら先ほど述べた「プライバシー権」や「氏名権」、「肖像権」が「人格権」として認められているのは、それらの権利が憲法13条で保障されている「自己決定権」の一内容として認められていることもその理由の1つです。


そうすると、仮に「入れ墨を入れる自由ないし権利」が自己決定権の一内容として憲法13条により保障されているとすれば、この自由ないし権利も「人格権」の1つとして認められる可能性が高くなりそうです。


原告の主張や法律構成は不明ですが、新聞記事による「人格権侵害」を理由にしているとするならば、その主張の根底には上記のような憲法に基づく主張もされていると推測されます。


この事件についても、最終的にどう決着がつくのか、仮に判決が出るのであればどのような判決が出るのか、気になるところです。

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