社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

髪型を決める自由?

2012年6月 4日

今回は某市の職員入れ墨問題に関連して、自分の髪型を決める自由が日本国憲法上保障されるのかどうかなどを中心について語っていきたいと思います。

突然ですが、自分の髪型を決定する自由というのは憲法上保障された権利なのでしょうか。


これを具体的な事例で考えてみると、(今は少ないとは思いますが)中学校の男子生徒に丸刈りを強制したりする校則や高校生にパーマを禁止する校則は憲法に違反し、無効となるのでしょうか。


この問題、憲法を勉強されたことのある方は最初のほうで勉強すると思いますが、憲法13条には以下の規定があり、いわゆる「幸福追求権」を国民の権利として認めています。


「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、【中略】最大の尊重を必要とする」


そして、この「幸福追求権」の一部を構成するものとして、自己決定権(一定の個人的事柄について、公権力(国や学校など)から干渉されることなく、自ら決定することができる権利)が憲法13条によって保障されているといわれています(憲法学者の中では、この点はほぼ多数説といえると思います)。


なお、この権利を認めた最高裁判例はありませんが、地方裁判所レベルでは、この自己決定権が憲法13条により保障されるとしたものがあります。


そして冒頭の髪型を決定する自由も、個人的事柄について自ら決定することですから、これについて公権力から干渉されないことは、自己決定権として憲法13条により保障されるということになります(上述の自己決定権が憲法13条により保障されるとした地方裁判所も、髪型を自由に決定しうる権利は、自己決定権の一内容として憲法13条により保障されるとしました)。


そうすると、この髪型を決定する自由を制限する校則は無効ということになるのでしょうか。


この点、先にあげた憲法13条の条文に「公共の福祉に反しない限り」という文言が入っていたかと思いますが、一般的に憲法上保障された権利・自由といえども絶対無制限ではなく、一定の合理的な制限を受けるとされています。


そこで、先述の校則が憲法13条に違反するか考えるにあたってポイントとなるのが、校則により髪型の自由を制限する目的は何か、その目的を達成するための規制の態様や程度が規制の目的と十分合理的な関連性があるかどうかです。


まず目的ですが、学校で髪型の自由を制限するのは、勉学に集中させる、学校として一定の規律や秩序を守らせることなどだろうと思います。


そして手段ですが、パーマは禁止するものの、他の髪型をすることは認めているというのであれば規制の程度としてそれほどきついものではありませんので、規制目的と十分合理的な関連性があるということができ、憲法に違反しないということができると思います。


ただ中学男子生徒に丸刈りのみしか認めないというのは、長髪を禁止するなど同じ目的を達成するのに、より規制の緩い手段があることからすれば、少し規制としては厳しすぎ、目的達成と十分な合理的関連性がなく、憲法に違反する可能性があるということもできるのではないかと思います(この点については色々な考え方があるだろうと思います)。


ところで、今回の某市の職員入れ墨問題。入れ墨を入れることは自己決定権の一内容として憲法13条で保障されるといえるのでしょうか。


仮に保障されているとして、入れ墨を理由に配置転換したり、入れ墨に関するアンケートを拒否する職員を解雇したりする某市の行為は憲法13条に違反することになるのでしょうか。


先の髪形を決定する自由を制限する校則のケースの検討の仕方を参考に、一度自分の頭で考えてみると、いい頭のトレーニングになるのではないでしょうか。

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