社内弁護士森田の訴訟奮戦記ブログ

このブログでは、大幸薬品の社内弁護士である森田が、「セイロガン糖衣A」ブランドを守るために行っている活動やブランドへの「思い」をお届けします。

色彩構成と不正競争防止法

2012年3月 5日

今回は、医薬品のカプセルとPTPシートの「色彩構成」が、不正競争防止法第2条第1項1号にいう「商品等表示」に該当するかどうかを判断した裁判例について紹介します。

事件の概要ですが、病院向けの胃炎・胃潰瘍治療剤(カプセル剤)を製造販売する原告が被告に対し、原告のカプセルとPTPシート(薬の包装紙で、指で押し出すタイプのものです)の色彩構成と類似した薬剤を販売するのは、不正競争防止法第2条第1項第1号に定める不正競争行為(周知表示混同惹起行為)に当たると主張して、被告の製造したカプセル及びPTPシートを使用した胃潰瘍医療薬の製造販売の差し止めや損害賠償等を求めたものです。


原告のカプセルの色彩構成は、蓋の部分(キャップ)が概ね緑色、蓋をされる部分が概ね白色で構成され、そのカプセルを収納するPTPシートは表面及び裏面ともに銀色地からなっていました。そして被告のカプセル、PTPシートともに、原告のカプセル、PTPシートと同じ色彩構成です。


よって、色彩構成の類似性の点では争いはあまりないように思われますが、この事件で争われたのは、カプセルやPTPシートの「色彩構成」が不正競争防止法にいうところの「商品等表示」に該当するか否かでした。


ここで「商品等表示」について説明すると、被告の行為が不正競争防止法第2条第1項第1号に定める不正競争行為(周知表示混同惹起行為)に該当するためには、「他人」である原告の「周知」な「商品等表示」と「同一又は類似」の表示を被告が使用したことを主張立証する必要があります。


従って、原告の主張が認められるためには、原告が類似すると主張する医薬品のカプセルやPTPシートの「色彩構成」が「商品等表示」に該当する必要があるのです。


この「商品等表示」については、不正競争防止法にその定義が定められており、「人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するもの」とされています。


判決ではこの定義を引用し、医薬品のカプセルやPTPシート自体は「商品の容器若しくは包装」に該当するとしました。


しかしながら判決は、「色彩」については、本来であれば、文字や図形、記号、そして物の形状や模様等と結合して「商標」や「意匠」の対象となるものであり、不正競争防止法もカプセルやPTPシートの色彩自体の独占を認めたわけではない等として、


カプセルやPTPシートの色彩自体が「商品等表示」になるためには、その色彩自体の「特別顕著性」(色彩が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していること)とその色彩自体の「周知性」(その色彩が特定の事業者によって長期間独占的に使用され、ないしは極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績により、需要者においてその色彩を有するカプセル、PTPシートが特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること)が必要であると判断しました。


その上で、原告のカプセルとPTPシートの色彩には、特別顕著性や周知性はないとして、不正競争防止法第2条第1項第1号にいう「商品等表示」には該当しないと判断し、原告敗訴の判決を下しました。


たしかに「色彩」については、デザイン等を保護する「意匠法」により保護されるべきとも思われますので、不正競争防止法に基づき主張することはなかなかハードルが高かったのではないかと思われますが、ではなぜ原告はこのような裁判をしたのでしょうか(なお、原告は他にも10社、同様の訴訟を提起しましたが、全て敗訴したようです)。


これは、今回対象となっている医薬品が従前は特許により防衛されていたものの、その特許が切れ、いわゆる後発医薬品が多数流通するようになってきたことから、この後発医薬品の流通を止めるべく、訴訟を提起したものだと思われます。


原告も本件訴訟提起当時は、特許法に基づく請求ができない中、どのような法律構成で訴訟提起するか苦心されたと思いますが、カプセルやPTPシートの「色彩構成」や「不正競争防止法」に着目し、多数の会社に訴訟提起をして、自社製品を防衛しようとした姿勢に対しては、自社製品、自社ブランドの法的防衛を担当する者として見習うべきであると感じました。

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